関西医科大BRAND

関西医科大学

本学は、建学の精神に則り、自由・自律・自学の学風のもと、学問的探究心を備え、幅広い教養と国際的視野をもつ人間性豊かな良医を育成することを教育の理念としています。

慈仁心鏡
慈仁心鏡、すなわち慈しみ・めぐみ・愛を心の規範として生きる医人を育成することを建学の精神とする。

関連施設

  • 附属病院
  • 総合医療センター
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  • 附属看護専門学校
  • 卒後臨床研修センター
疾患モデル動物センター

疾患モデル動物センター 

疾患モデル動物センターについて

疾患モデル動物センター 研究成果

細胞外マトリックス破綻による疾患モデル(薬理学):

組織の伸縮性を担うのは弾性線維という細胞外マトリックスであり、その劣化・分解が皮膚のたるみだけでなく肺気腫や動脈中膜硬化の直接原因となる。本研究では新たな細胞外マトリックス分子の遺伝子改変マウス作成による新規疾患モデルを開発し、生体内での役割を明らかにする。LTBP-4という細胞外マトリックスタンパク質の遺伝子欠損マウスの解析を行い、弾性線維形成不全のため肺気腫や動脈の硬化と蛇行などヒト老化に類似した表現型を示すこと、我々が以前作成したFibulin-5の遺伝子欠損マウスによく似ていることを見いだした。LTBP-4がFibulin-5と結合しFibulin-5–エラスチン複合体をミクロフィブリル上に沈着させるための足場となることを明らかにした(*4)。LTBP-2という細胞外マトリックスタンパク質の遺伝子変異が複数の先天性緑内障患者で報告された。これらの患者は眼圧が上昇し水晶体脱臼を伴うのが特徴で、眼圧上昇の程度は症例によって大きく異なっている。我々はLtbp2遺伝子欠損マウスの作成と解析を行い、眼圧は上昇しないが水晶体脱臼はおこること、その原因が水晶体を支持する毛様小帯の形成不全によること、LTBP-2は毛様小帯のミクロフィブリル線維束を形成するために必須の役割を持つことを明らかにした。またLTBP2変異患者でみられる眼圧上昇は二次的なものであることが示唆された(*3)。二重欠損マウスは重度の肺気腫を発症し、約半数の二重欠損マウスが生後1ヶ月以内に死亡した。また、LTBP-2欠損マウスの毛様小体にLTBP-4を強制発現させたところ、LTBP-2欠損マウスに見られた水晶体脱臼の表現型が改善され、毛様小体形成が回復した。これらの結果からLTBP-2とLTBP-4は共に成熟したミクロフィブリル線維束の形成に必要であることが証明された(*1)。これらの研究から眼科との連携が促進された。

疾患モデル  先天性緑内障、先天性水晶体脱臼    皮膚弛緩症  学内専用

 
接着破綻による自己免疫疾患モデル(分子遺伝学部門):

Rap1下流エフェクター分子Mst1の欠損マウスは加齢とともに自己免疫様病態を呈する。本プロジェクトではそのメカニズムとRap1シグナル制御を明らかにすることを目的とする。Mst1キナーゼ欠損マウスは多臓器に炎症細胞浸潤および自己抗体産生が起こり、この病態はT細胞系列で欠損した場合で起こることから胸腺選択過程を解析した結果、胸腺細胞の選択異常が見出された。2光子顕微鏡を用いた胸腺組織イメージングの手法を樹立し解析した結果、胸腺髄質に存在する成熟胸腺細胞の移動の低下し、さらに負の選択過程を再現した胸腺組織イメージング手法を確立し解析した結果、Aire陽性胸腺上皮細胞との抗原依存的接着(免疫シナプス)が負の選択過程で起こっており、Mst1欠損で障害されていることが明らかになった (*12)。また、胸腺細胞の移動や免疫シナプス形成にはRap1シグナルが必要であり、Semaphorin3e/PlexinD1を介して負に制御されていることを明らかにした(*6)。自己免疫病態を抑制する制御性T細胞(Treg)の機能を解析した結果、Mst1欠損Tregは抑制機能が障害されていることがマウス腸炎モデルを用いて明らかになった。さらにMst1欠損Tregは抗原特異的抑制機能が低下しており、樹状細胞との免疫シナプス形成が低下していることが判明した(*11)。一方、Mst1欠損細胞障害性T細胞(CTL)の障害機能は亢進していた。Mst1はFoxO1/3を抑制することによってT-betを介するIFNg, granzymeの産生を抑制していた(*7)。ヒト自己免疫疾患IgG4関連疾患患者において健常人および関節リウマチ患者と比較してMst1遺伝子プロモーターのメチル化が亢進し、TregにおけるMst1発現が有意に低下していたことを岡崎、野村らと共同で報告した(*8)。以上のことからMst1欠損マウスモデルが呈する自己免疫病態は胸腺選択の異常、制御性T細胞の抑制機能低下、細胞障害性T細胞の機能亢進が関与していることが示され、さらにMst1のエピジェネティック制御異常がヒトIgG4関連疾患に関与する可能性が指摘された。制御性T細胞、CTL, 及びエピジェネティック解析は岡崎(第三内)らとの共同研究で行われた。二光子生体組織イメージングによってリンパ球はリンパ組織内でLFA-1/ICAM-1依存性の高速な移動と非依存性の低速移動をしていること、前者はケモカインによるRap1シグナルおよび樹状細胞が関与し、後者は間葉系細胞が産生するautotaxin/LPAによるRhoシグナルが関与していることを明らかにした(*10,9)。また免疫シナプスではRap1/RAPL/Mst1カスケードによって活性化されたNDR1キナーゼがインテグリン結合蛋白質Kindlin-3を調節することによって高親和性LFA-1結合を誘導すること、そして高親和性結合が免疫シナプス形成、抗原依存的増殖に不可欠の働きをしていることを一分子イメージング、組織ライブイメージング等を用いて明らかにした(*5)。生体組織イメージングの確立により、藤澤、岡崎らと共同でヒト化マウスを用いたHTLV感染、炎症性腸疾患解析を行う共同研究を立ち上げ、私学振興共済事業団による学術研究助成に採択され、新たな疾患モデル作成の成果を出しつつある。

疾患モデル T細胞性自己免疫疾患     リンパ増殖性自己免疫疾患  T細胞接着不全症(白血球接着不全症)学内専用

 

IgG4関連疾患・自己免疫性消化器疾患・自己免疫性消化器疾患動物モデル開発と診断治療(内科学第三):

本研究ではわが国より発信された難治性疾患であるIgG4関連疾患の膵病変である自己免疫性膵炎の発症機序を明らかにすることを目的とした。疾患関連抗原に特異的な自己免疫性膵炎モデルマウスやpoly I:C免疫膵炎モデルマウスを開発作成し、免疫・分子生物学的解析を行った。更にステロイドや免疫抑制剤以外に膵炎発症時の小胞体ストレスとその軽減による膵炎治療効果について検討し、新規治療法の開発を行った。その結果、poly:ICをMRLマウスに投与して、TLR3を賦活して、膵炎、胆管炎、唾液腺炎などの発症を認め、自然免疫系の異常反応が自己免疫性膵炎発症に関わる可能性が示唆された。膵炎モデルマウスにelf-2α脱リン酸化阻害薬投与により膵組織でのリン酸化elf-2α発現の増強と関連して膵炎の軽減が認められた(*18,15) 2. 自己免疫性消化器疾患動物モデル開発と解析:本研究では大腸癌発生母地として問題となる潰瘍性大腸炎の動物モデルを用いて、発症機序を解析するとともに、新規治療法の開発を行うことを目的とした。ヒトの炎症性腸疾患発癌モデルと考えられる、大腸癌モデルマウスを作成し、我々の開発した消化管幹細胞マーカーであるリンカー部スレオニンリン酸化Smad2,3蛋白(pSmad2/3L-Thr)に対する抗体を用いて、腫瘍幹細胞としての可能性や発癌メカニズムについて解析した。更に実験的大腸炎モデルを用いて小胞体ストレスとその軽減による腸炎治療効果について検討し、新規治療法の開発を行った。その結果、大腸癌モデルマウスにおいては、非腫瘍部(炎症部)においては、pSmad2/3L-Thr強陽性細胞は組織幹細胞の存在部位に認められたが、腫瘍部では腫瘍の辺縁に散在性に認められ、数は増加していなかった。pSmad2/3L-Thr強陽性細胞の一部にBrdUの長期陽性細胞が認められ、組織幹細胞同様のslow-cyclingなβカテニン陽性の腫瘍細胞であることが確認出来た。潰瘍性大腸炎モデルマウスにおいては小胞体ストレスシグナル伝達経路の下流分子elf-2αの脱リン酸化阻害薬(salubrinal)を腹腔内投与して腸炎の改善効果を認めた(*13)

疾患モデル  IgG4関連疾患動物モデル    自己免疫性消化器疾患動物モデル(潰瘍性大腸炎および関連癌)学内専用

 

HTLV-1感染ヒト化マウスモデルを用いたATL発症予防法の開発(微生物学):

 本邦には100万人以上のヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)感染者が存在し、約5%の生涯発症率で平均余命1年以内の悪性の白血病、成人T細胞白血病(ATL)を発症するが、ATLに対する治療法は未だに確立されていない。発症予防法や治療法の開発には感染モデル動物が必須であることから、重度免疫不全マウス(NOGあるいはNSG; NOD-SCID/IL-2 receptor γ chain knock-out) 骨髄内への臍帯血由来CD133陽性ヒト造血幹細胞の移植により、ヒトの造血系を持つヒト化マウスを作製し、これにHTLV-1を感染させることで、感染T細胞の腫瘍性増殖、ATLに特徴的な花弁様分様核を有するリンパ球の出現等、ATL様の病態を再現することに成功した。同感染マウスモデルにおいては、HTLV-1感染に応答した種々のサイトカイン産生、抗HTLV-1 IgG抗体、および抗HTLV-1 Tax細胞障害性T細胞(CTL)の発現も確認され、これまで発表されているヒト化マウスの系では不十分とされていたヒト宿主免疫の再構築が達成された(*23,20)
  HTLV-1感染マウスに対するAZTおよびIFN-α投与の有効性を検討したところ、併用群においてはほぼ完全に感染細胞の増殖が抑制され、AZT/IFN併用療法の有効性が確認された。
  1)  HTLV-1の発がん蛋白Taxの発現抑制作用が培養細胞レベルで示されているHSP90阻害剤ゲルダナマイシンの低毒性誘導体17-DMAGの個体レベルでの効果を検討したところ、感染細胞の増加が顕著に抑制され、さらに感染マウスの期間生存率も上昇した。
  2)  Tax蛋白全長(353aa)にわたる12種類の40アミノ酸長のロングペプチド混合物をアジュバントとともにヒト化マウス皮下あるいは鼻腔にワクチン投与後HTLV-1を感染したところ、感染細胞の増殖遅延と感染マウスの生存率上昇が観察された。
  HTLV-1感染細胞のヒト化マウスへの経口投与により、低レベルでのHTLV-1感染が長期に維持されるHTLV-1感染無症候キャリアモデルが確立された。

 疾患モデル  成人T細胞白血病(ATL) 学内専用

 

組織造血幹細胞制御による難治性血液疾患の治療開発(衛生学):

 本課題研究では、ヒト臍帯血由来未分化造血幹細胞(HSC)の超高度純化と単一細胞レベルでの解析を目指して研究を推進した。並行して、HSC支持能(ニッチ機能)を持つヒト骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)を樹立して、そのHSC支持機構の解明を目指した。ヒト臍帯血由来18Lin-CD34-細胞を用いて、この分画に発現しているHSC特異的な分子、接着や遊走に関わる分子を網羅的にFACS解析し、CD133抗原を同定した。CD133抗原はヒト臍帯血由来CD34+/-HSCsの共通の陽性分子マーカーであることが初めて明らかにされた(*28)ヒト臍帯血由来CD34-SRCsの高度濃縮マーカーとしてglycosylphosphatidylinositol- anchored protein (GPI-80)を同定した(特願2014-090292)(*25)。CD133とGPI-80に対する抗体を同時に用いることにより、ヒト臍帯血由来CD34+/-HSCsを超高度に純化する方法を開発し、CD34+/-CD133+GPI-80+HSCsの頻度は、各々、1/5、1/8と世界最高レベルであった(投稿中)。ヒト骨髄細胞由来Lin-CD45- 細胞より、抗CD271及び抗SSEA-4抗体を用いることにより、間葉系幹細胞(MSCs)を予期的に分離することにも成功した。CD271+ SSEA-4+細胞に由来するMSCs(DP MSCs)(特願2013-170480)が、高いCD34-SRC支持能(ニッチ機能)を持つことを明らかにした(第52回米国血液学会発表)。このDP MSCを用いてCD34-SRC (HSC)とニッチにおけるHSC/MSCの相互作用の解明を行ない、ヒト臍帯血由来CD34+/-HSCとDP MSCの接着の重要性を明らかにした。(*26)ヒトHSCにおけるTHPO/MPLシグナルの機能的意義は明らかにされていなかった。CD34-MPL+SRCがヒト造血を一次マウスで6か月間維持するshort-term HSCであること、CD34+MPL+SRCは、ヒト造血を二次マウスまで1年間維持するintermediate-term HSCであること、CD34+/-MPL-SRCsはヒト造血を三次マウスまで1年間以上維持するlong-term HSCであることを初めて明らかにした(*24)

 

代謝シグナル破綻によるモデル疾患動物の開発と解析(生体情報部門):

 免疫担当細胞の生存・分化・増殖過程においてエネルギー代謝レベルは厳密に制御されている。本研究では細胞増殖と密接に関わるmTORC1経路に着目し、mTORC1シグナルに必須のアダプター分子であるRaptor分子の細胞系譜特異的欠損マウスの樹立に取り組んだ。Raptor分子をT細胞系列特異的に欠失させたところ、末梢のヘルパーT細胞の機能分化が部分的に阻害されることが分かった。また、活性化に伴うT細胞の生存率がmTORC1シグナルの無い状態では著しく低下する可能性も示唆された。また、樹状細胞系譜特異的にRaptor分子を欠損させると、腸管における従来型樹状細胞のIL-10産生能の低下と、それに伴う腸管免疫応答の異常亢進が観察された。mTORC1シグナルが、従来型樹状細胞において抑制性サイトカインIL-10の産生を介したホメオスタシス調節に関与することが明らかとなった(*32)。さらにB細胞系譜特異的Raptor欠損マウスを樹立したところ、骨髄においてB細胞分化の停止が認められる一方、腸管においてのみIgA陽性の細胞が機能していることが明らかになった(投稿中)。一方、mTORC1シグナルを負に制御するTsc1B細胞系譜特異的に欠失させるためにmb1-Cre x Tsc1-floxマウスを樹立したところ、予想に反してB細胞分化に大きな異常は認められなかったものの、100%の頻度で腎嚢胞を発症することが分かった。現在、この腎嚢胞マウスを利用して、腎嚢胞の発症のメカニズム解明に取組んでいる。

疾患モデル 免疫不全    多発性嚢胞腎  学内専用

 

慢性疼痛モデルによる神経可塑性(医化学):

 末梢神経再生動物モデル:神経再生には、細胞、場、増殖因子の3要素が必要である。我々は、末梢神経の再生機構を明らかにするために、坐骨神経(細胞)を切断し、切断端をシリコンチューブ(場)で接続し、増殖因子をはじめとして様々な物質を4週間持続的に注入できる末梢神経再生モデルを確立した。このモデルをNaチャネルの1つNaxのノックアウトマウスに適用して、神経細胞と支持細胞であるSchwann細胞の間で乳酸のエネルギーカップリングが、末梢神経再生に重要な役割をはたしていることを明らかにした。神経障害性疼痛動物モデル:NIPSNAP1、SCRAPPER、BEGAINをはじめ、神経障害性疼痛や高次脳機能に関連する遺伝子を同定、それらの改変マウスを作製し、その機能解析・行動解析を行った。また、帯状疱疹後神経痛モデル、術後痛モデル、糖尿病モデルを作製し、その発生維持機構の解明、治療法の開発を行った(*38,36,34)。Ovol 遺伝子欠損マウス:Ovolはショウジョウバエの卵形成に関与する転写因子ovoのマウスホモログでovol1とovol2が存在する。我々がクローニングしたovol2はES細胞に発現し、そのノックアウトマウスは胎生致死である。Ovol2は生殖原基や精巣に強く発現し、生殖細胞の形成に関与することを明らかにした。一方、ovol1ノックアウトマウスは出生し、皮膚で表現型を示す。ovol2とovol1の関係をovol2の皮膚でのコンディショナルノックアウトマウス、過剰発現マウスで検討した結果、Ovol2は皮膚の幹細胞にも発現しており、ovol1の遺伝子発現調節を行い、皮膚の表皮形成、皮膚のバリア機能形成に重要な役割をしていることを明らかにした(*35)

 疾患モデル  坐骨神経切断—再生モデル  学内専用

 

先天的恐怖と後天的恐怖の情報統合メカニズム(神経機能部門) :

 本研究では、嗅覚刺激による先天的と後天的な恐怖情報の統合による行動制御という独自のモデルを用いて、この未知のメカニズムを分子レベルで解明することを目指した研究を実施した。チアゾリン類匂い分子の化学構造を人工ライブラリーを用いて最適化し、強力な先天的な恐怖行動の誘発活性を持つ匂い分子「チアゾリン類恐怖臭(thiazoline-related fear odors: tFOs)」」の開発に初めて成功した。先天的な恐怖刺激の提示は、後天的な恐怖行動を抑制する活性を持ち、先天的な恐怖行動が後天的な恐怖行動に優先された。恐怖行動の統合に関与する脳領域を全脳活性化マッピング法により調べた結果、先天的な恐怖刺激は扁桃体中心核(CeA)を活性化するのに対して、後天的な恐怖刺激は扁桃体側方核(LA/BLA)にあった。さらにセロトニン2A受容体(HTR2A)の阻害薬が後天的恐怖行動を抑制する一方で、先天的恐怖行動を増悪させることが明らかにななり、HTR2Aが先天的と後天的恐怖の拮抗的な統合を仲介している可能性が示唆された。CeAのHTR2A発現細胞が先天的と後天的な恐怖の拮抗的で階層的な制御を担う可能性を検証した結果、先天的恐怖刺激はCeA-HTR2A発現細胞の神経活動を抑制するが、この結果、先天的恐怖行動が増強されるとともに、後天的恐怖行動が抑制されることが解明された(*40)。

 疾患モデル  恐怖症、強迫性障害、不安障害、PTSD、うつ病  学内専用

 

マルチカラー細胞系譜追跡マウスの開発による組織幹細胞とそのがん化の解析(病理学第一):

Cre-loxp システムを用いて幹細胞とその子孫細胞を蛍光タンパク質などのレポーター遺伝子によって標識する細胞系譜追跡法は単細胞レベルで生体外に単離して移植する等の研究手法が使えない成体幹細胞にとって非常に強力かつ有用な研究手法である。しかしながら、現在一般的に行われている方法では、レポーター分子が1種類であるために、研究対象組織の幹細胞に非常に特異的なマーカーがあれば有用であるが、そうでない場合には限られた情報しか得ることができなかった。一方フローサイトメトリーを用いた成体幹細胞単離においては、複数の幹細胞マーカーを組み合わせる事で単離する幹細胞の純度を上げることが一般的になっている。今回の研究プロジェクトでは複数の幹細胞マーカーを組み合わせることで細胞を標識する細胞系譜追跡法の新手法の開発に取り組んだ。小腸上皮幹細胞の自己複製におけるWnt経路関連増殖因子のうち、FzdリガンドのWntとLgr5リガンドのRspondinの役割分担について解析した(*44)。また、マウスモデルを使って大腸がんにおけるがん幹細胞候補細胞の挙動と起源を明らかとした。また、舌癌においてもBmi1ががん幹細胞マーカーとして機能することが明らかとした(*43,45)。

 

網膜変性症モデルの開発と病態制御ならびに腫瘍モデルによる制御物質の同定(病理学第二) :

 アルキル化剤であるメチルニトロソ尿素(MNU)のラットへの単投与は乳腺をはじめ種々の臓器に発癌を促すことにより臓器癌モデルの作出でき、網膜視細胞にアポトーシスをきたすことより網膜変性症のモデルを作出できる。これらのモデル動物を用いて脂肪酸のうちアラキドン酸とミード酸、ウコンの黄色欠素であるクルクミン、カテキン類を含む緑茶抽出物、さらにヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)の効果を検討した。アラキドン酸の胎仔期から乳仔期という発育期での投与は、MNU誘発網膜変性症の軽減に有効であった。一方、クルクミンや緑茶抽出物の成熟動物への投与はMNU誘発網膜変性症を軽減した。MNU誘発乳癌は高率にホルモン依存性であるが、MNU誘発乳癌の発生をモニターすることにより、妊娠ホルモンのひとつであるHCGの投与やn-9脂肪酸であるミード酸はMNU乳癌を抑制し、乳癌に対して制癌作用を有することが判明した(*51,52,47,48,49,50)。歯原性腫瘍は人工作製が困難である。我々は低率ながらMNUにより歯原性腫瘍の作製に成功した経験から、現在緑茶抽出物のMNU誘発歯原性腫瘍に対する影響につき検討中である

 

疾患モデルマウス作製方法の開発(モデル動物部門):

 24年度から現在までに、14系統のES細胞を樹立し、このES細胞を8細胞期胚に移植することでキメラマウスの作製を試みた。その内の10系統はキメラマウスの作製に成功した。さらに、作製したキメラマウスの7系統で、生殖系列にのる遺伝子改変マウスの作製に成功した(*53,54,57)。作製した遺伝子改変マウスの生産効率を高めるための技術として、3週齢雌マウスを使用した体外受精によって、自然交配よりも早いサイクルでの産子獲得や、麻酔処置後に生存したまま片側の精巣上体尾部を採取する事で貴重なマウスを残したままの体外受精が可能であった。また、26年度からはCRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を用いたKOマウスの作成にも着手し、シグナル誘導増殖関連遺伝子であるSipa1のKOマウス作製を行った。CRISPR/Cas9でplasmidを用いた前核注入法を採用し、生存前核卵子と2細胞期まで発生した胚を移植した結果、11/40 (28%)が産子として得られ、その内の3匹は数塩基~数百塩基の欠損を認めた。また、多様な疾患モデルマウスの中には、排卵障害を持つものも存在しており、卵巣からの未成熟卵子を体外で受精可能な卵子まで発生させる体外成熟技術を用いた体外受精に関しても研究を進めている。

  

グリア・ニューロン相関を解析するモデル(解剖学第一):

 1)硫酸化糖脂質欠損マウスおよびクプリゾン誘発性脱髄疾患モデルに関する研究:エストロゲン受容体(Gタンパク質結合型受容体30; GPR30)が希突起膠細胞分化過程の全段階で発現している。そこで、cuprizone投与で脱髄を起こさせた多発性硬化症モデル動物ラットを作出し、髄鞘形成各期においてGPR30のアゴニストG1などの薬剤投与をおこない、免疫組織化学をおこなった。その結果、GPR30を介して希突起膠細胞の分化成熟および髄鞘形成が促されることを突き止めた。すなわちエストロゲンの希突起膠細胞に対する作用を明らかにした(*62)。 脊髄後根神経節では、神経節細胞およびそこから出た突起を被う末梢のグリア細胞の特質を明らかにするとともに、その細胞動態や細胞亜種分類を試みた。その結果、未分化な指標とされてきたSox2が成熟した細胞群にも存在し新たな機能が推察された(*60)。 2)マウス中大脳動脈閉塞モデル:マウス側頭骨部切開により中大脳動脈に到達、この動脈を焼灼して片側終脳の永久脳梗塞モデル動物を作出した。脳梗塞発症後のニューロン-グリア相関、とりわけそのクロストークに関与する因子について研究をおこなった。新規的発見として、ニューロステロイドの一種である胆汁酸が梗塞部位に集積する事を見出した。

 疾患モデル  マウス中大脳動脈閉塞(MACO)モデル(脳梗塞)    クプリゾン誘発性脱髄疾患モデル   硫酸化糖脂質欠損マウス精子形成不全・ミエリン形成不全  学内専用

 

iPS細胞療法の基礎研究(解剖学第二) :

 (1) 神経系由来の細胞をもとに樹立したiPS細胞の未分化性及び多分化能について検討した。Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc, Lyn28の5つのリプログラミング遺伝子をコードしたトランスポゾンベクターを用いて、マウス由来神経上皮細胞 (NE4C) からiPS 細胞へのリプログラミングを行った。樹立したiPS-NE4C細胞はSSEA1由来の強い蛍光シグナルを発し、未分化性を有することが示された。さらに、iPS-NE4C細胞を分化させ、三胚葉系への多分化能を有することが示された。(2) 中枢神経系は、再生能力が低いことが知られているため、iPS 細胞療法の重要なターゲットとなる。分化させた iPS 細胞には、多くの細胞種が混在するため、神経幹細胞特異的に薬剤耐性遺伝子を発現するiPS 安定発現細胞を樹立し薬剤選択することで、神経幹細胞を簡便に純化させる方法を考案した(*65)。

 

脳内神経伝達物質の破綻による疾患モデルの作成と評価(生理学第二):

 セロトニンは精神神経疾患の治療薬にもその作用薬が多く、情動や意思決定などに影響を及ぼす神経メカニズムの同定は重要であり、サルを用いて解析するシステムを構築することを目的とした。そのため、げっ歯類で使用されているウイルスベクターを用いて細胞に選択的にDREADDやチャンネルロドブシンを発現させ、セロトニン細胞のみを選択的に機能促進・抑制する方法をサルに応用することを試みた。サルの背側縫線核の位置を、MRI画像及び電気生理学的に同定し、神経活動を記録しながら刺入しウイルスベクターを注入した。その結果、注入部位および投射部位において光刺激にも十分反応することが明らかになった。今後、この系を用いてサルの精神疾患モデルの作成を試みる。

 

自閉症におけるプロトカドヘリンの役割(生物学):

 自閉症関連遺伝子であるプロトカドヘリン9のノックアウトマウスの行動解析を理化学研究所若菜成晴博士と共同研究を行い、このマウスが新奇物体を避ける傾向にあるなど情動が行動に異常があることがわかった。また、理化学研究所永雄総一博士との共同研究により視機性眼球反応に異常があることも分かった(未発表)。これらの異常の原因部位や細胞を同定するために理化学研究所との共同研究でプロトカドヘリン9のコンディショナルマウスの作製にとりかかった。これまでにFloxed マウスを作製できたので、今後、解析を進める予定である。 

 疾患モデル  Pcdh9(Puro-loxP-Neo)(自閉症)  学内専用

 

疾患モデル動物における再生医療の応用と高度不飽和脂肪酸の生活習慣病予防と治療(公衆衛生学) : 

 下丘における加齢にともなうGluN1遺伝子の発現制御:C57BL/6J マウスの下丘において、加齢性難聴に関係すると考えられる遺伝子発現変化をcDNA microarrayを用いて解析した。その結果、middle-aged群でのNMDA receptor subunit ζ1 (GluN1)遺伝子の著明な発現低下を認めた。young群とmiddle-aged群の組織中の発現をin situ hybridizationを用いて比較した結果、middle-aged群では陽性細胞数が減少していることを認めた。不飽和脂肪酸の肝臓及び脳へ与える影響をラットモデルで検討した結果、DHA-LPC摂取は血清および肝臓の中性脂質とコレステロール濃度の低下や血清中のDHA含量を増加させるが、脳のDHA濃度には影響しないことが示唆された。

 疾患モデル  加齢性難聴  学内専用

 

免疫原性血小板減少症のモデルマウス開発とその病態解明(内科学第一):

 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は抗血小板抗体の産生により血小板が減少し、出血傾向を来す疾患として知られが、適切なITPモデルマウスはいまだ確立されていない。まず抗血小板抗体産生過程およびその機序を樹状細胞との関連において再検討した。その結果、活性化血小板が樹状細胞の接着共刺激分子(CD40、CD86)の発現増強をもたらし、胸線間質リンパ球増殖因子(TSLP)との恊働作用により免疫応答をよりTh2方向にシフトさせ、アレルギーあるいは抗体産生側への偏向を誘導していることが示唆された。上記の成果を念頭に置き、ヒト血小板を投与することでヒト/マウス血小板交差反応性を利用して抗血小板抗体産生を試みる予定である。なお応答のTh2側への偏向を助長するためのAlumアジュバントの使用、投与前の血小板の活性化などを念頭に置きモデルマウスの作出を検討している。

 

糖尿病性心筋障害モデルマウスの作成と病態解析(内科学第二):

 糖尿病が冠動脈疾患の重要な危険因子であるが、冠動脈に有意な狭窄がないにもかかわらず心機能障害がみられる糖尿病性心筋障害とよばれる患者が存在する。糖尿病性心筋障害の分子機構に関して不明であるが、我々は心筋におけるインスリン抵抗性がその基盤病態として存在するのではないかと想定した。本研究では成人期に心筋特異的にインスリン受容体を欠損させ、心筋細胞だけにインスリン抵抗性が存在するようなマウスを作成し、その心機能を解析した。まず、tamoxifen投与によって心筋特異的にインスリン受容体遺伝子を欠損するマウスを樹立し、このマウスに生後12週から2週間tamoxifenを投与すると、2週間後にはインスリン受容体の発現レベルは著明に低下し、tamoxifen誘導型心筋特異的インスリン受容体欠損マウスが得られ、心重量の減少と心機能の低下が認められた。インスリン受容体によるAkt-mTOR経路のシグナルが選択的に減弱し、mTORを活性化すると心重量減少・心機能低下ともに改善がみられた。今後、この糖尿病性心筋障害モデルを用いてAkt-mTOR経路の機能を解明する。

 

疾患モデル動物の開発と解析:難治性ヒト疾患の病態解明と診断・治療への応用(外科学):

 1)ラット正所性膵臓腫瘍モデルにおけるゲムシタビン(GEM)療法後のα-SMA陽性筋線維芽細胞様細胞活性の検討を行った。DSL-6A/C1細胞を用いて正所性膵癌ラットを作製し、GEM化学療法を行った。In vitroにてGEMと共培養するとDSL-6A/C1細胞増殖は有意に抑制され、膵癌ラットの生存期間はGEM治療群では有意に改善した。GEM治療群の膵癌組織中のα-SMAの発現は有意に減少したが、シリウス赤染色実験では有意差は認めなかった。GEM治療にてVEGFの発現は有意に減少したが、TGF-β1発現は阻害されなかった。これらの結果は、GEMは腫瘍増殖を抑制するばかりでなく、VEGF発現を減少させる事で膵星細胞の抑制を強いていると考えられた(*79)。2)ラット膵癌におけるアンギオテンシンⅡタイプ1受容体拮抗剤;ロサルタン(LOS)の抗腫瘍効果を検討した。DSL-6A/C1細胞を用いて膵癌モデルを作成しコントロール群とGEM群、LOS群、GEM + LOS併用群の4群に分けて実験を行った。その結果、GEMとLOSの併用は、アンギオテンシンⅠを介したVEGF合成を阻害し細胞増殖を抑制する事によって、ラット膵癌の生存期間を有意に改善したと考えられた(*78)。

疾患モデル  ラット正所性膵臓腫瘍モデル   学内専用

 

 難治性ヒト疾患モデル動物を用いた組織欠損に対する修復、再生、再建の実験的研究(形成外科学):

 1.軟部組織再建モデル:ラット背部に創傷治癒ならびに再建のための実験モデルとして規格化した実験的皮弁を作成して延長効果を判定した。皮弁の下への薬剤投与にて差異を検討した。多血小板血漿(PRP:platelet-rich plasma )による効果の有効性が得られ、血管増生や皮弁延長効果の結果が得られている(*83)。2. 難治性皮膚潰瘍治癒モデル:ラット背部に規格化したモデル創傷を作成し、これに対して開放創、ゼラチン、PRP、ゼラチン+PRPでの比較検討を行い、創傷に治癒、組織、血管増生の検討を行った。ゼラチン+PRP適応で、有意に皮膚潰瘍の治癒傾向を認め、組織学的、血管増生、肉芽増生など有意な所見を得た(*82 )。 3. 骨再生モデル:若齢ラットと老齢ラットにての腓腹筋内への一定の空隙を作成して、異所性骨再生モデルを設定し、骨形成タンパク(rhBMP:recombinant human Bone Morphogenetic Protein)の埋入で有意に若齢ラットの誘導骨が得られ、この骨質、骨髄などを精査して老齢ラットでの誘導骨との比較を行った(*81,84)。

 疾患モデル 難治性皮膚潰瘍治癒モデル    骨再生モデル  学内専用

 

難治性気道炎症性疾患における好酸球の機能的役割の検討(耳鼻咽喉科・頭頸部外科学):

 難治性好酸球性気道炎症では、上気道の炎症を治療すると下気道の症状も改善することが知られており、そのメカニズムに関して上・下気道間に神経学的なinteraction、nasal-bronchial reflex (NBR)を介した経路が存在していると推察されているが、十分に解明されていない。本研究では好酸球性気道炎症においてどのように上気道と下気道がinteractionしているかを解明するため、上気道抵抗(鼻腔抵抗)と下気道抵抗を同時に測定するシステムを構築した。次に、好酸球の炎症局所での役割を検討するためには、好酸球の動態を追跡することが出来る遺伝子マウスを用いた検討が必要となる。しかし、好酸球を蛍光タンパク質などで発光させ追跡する事が出来るような遺伝子改変マウスは存在していないため、新しい遺伝子改変マウスの作製を進めている。一方、肺の炎症モデルの生体イメージングは、KMUコンソーシアムによる助成を得て、分子遺伝学部門と連携して立ち上げに成功した。これらの系を統合し、難治性気道炎症の解析を進める。

 

眼疾患モデルによる病態解明と新規治療法の開発(眼科学):

 臨床テーマである加齢黄斑変性に対してはレーザー誘発脈絡膜新生血管の発生モデル、緑内障については水圧を利用した虚血-再灌流モデル、糖尿病網膜症に対しては、低酸素網膜症モデルを確立した。また、レーザー誘発脈絡膜新生血管発生モデルに代表される網膜下に発育する脈絡膜新生血管モデルではなく、網膜色素上皮下に発育する脈絡膜新生血管モデルの作成を試みているが、モデル動物の作成には至っていない。

 

骨髄移植を用いたSKG/Jclマウスの関節破壊ならびに骨粗鬆症の解明(整形外科学):

 関節リウマチなどの自己免疫疾患で骨粗鬆症が進行する。炎症の原因となる未分化骨髄細胞(造血系細胞ならびに間葉系細胞)を正常骨髄細胞と置換することにより、骨粗鬆症の自然経過を正常に戻すことが可能か、SKG/jcl関節炎自然発症モデルを用いて解析した。このマウスにドナーであるC57/B6マウスの全骨髄細胞を骨髄内骨髄移植することにより、SKG/jclマウスの骨髄(造血系細胞)はドナー型に置換されていた。さらに、骨内にある骨芽様細胞(間葉系細胞)もドナー由来に置換されていた。臨床的にはSKG/jclマウスの関節炎は消失し、尿中DPDは正常マウスと同様の自然経過となっていた。難治性自己免疫疾患の治療として、白血球除去療法(LCAP)があるが、根治的治療法として骨髄細胞移植が有用であることが示唆された(*87)

 

脊髄損傷に対する動物モデルの作成と細胞治療の開発に向けて(救急医学):

受傷後の亜急性期、慢性期に同様の処置を行った場合に効果が期待出来ないか、を調べるために、動物実験にて脊髄損傷モデルを作成し、1−4週後の亜急性期、慢性期に骨髄間質細胞の髄液内投与にて神経機能の再生が得られないかを調べた。動物実験にて同種のGFP-transgenic ratの骨髄間質細胞を培養し、損傷ラットの第4脳室内に毎週1回計3回髄注した。運動機能(BBB score)は対照群と比較して有意な差を認めた。組織学的にもSchwann cellを伴った多数のaxonが遠位方向にも近位方向にも伸びていることが確認出来た。受傷後亜急性期、慢性期においても髄液内に投与した骨髄間質細胞はneurotrophic sourceとして作用した後、消滅することにより、安全に再生効果が期待出来るものと考えられた。

 

パーキンソン病モデルラットによるレボドパ誘発ジスキネジア(LID)の発症と線条体での遺伝子発現の変化についての研究(神経内科学):

ラットの一側内側前脳束に6-OHDAを局所投与し、一側パーキンソン病モデルラットを作製した。これを三群に分け、①無治療、②レボドパ持続投与(浸透圧ポンプ)、③レボドパ間欠投与(一日二回腹腔内注射)の処置を2週間行った後、レボドパ誘発性ジスキネジア(LID)の発症と、線条体におけるドパミンD1、D2受容体、アデノシンA2A受容体のmRNAの発現量の変化をリアルタイムRT-PCRで測定し術測と健側で比較した。LIDは②では発症せず③では発症した。ドパミン受容体発現量は①では変化は無かったが、②ではD2受容体のみ術側で増加し、③ではD1、D2受容体共に術測で増加した。A2A受容体は③のみ術測で増加していた。LIDはレボドパ間欠投与で発症し、D1およびA2A受容体の増加が関連している。この変化を抑制することがLIDの発症予防につながる可能性がある(*90)。

 

紫外線皮膚障害修復機構における表皮メラノサイト(皮膚科学):

 メラニンには紫外線防御能力の大きいユーメラニンと紫外線感受性の高いフェオメラニンの2種類が存在している。ヒトでは表皮にメラノサイトが存在するが、マウスのメラノサイトは真皮に存在するので、ヒトの皮膚組織の研究においてマウスを実験動物として用いることには制限がある。ヒトのようにメラノサイトを表皮に有するマウスは既に存在しているが、かかるマウスにおけるメラノサイト発現量は過剰なものであり、異常な色素沈着が見られるので実験動物としては不適切なものであった(J Invest Dermatol, 125, 521, 2005)。そこでバッククロスを何度も行うことにより表皮内ユーメラニンの含有量が少なく、フェオメラニンの含有量の多い新しいSCF-Tgマウスを作製した。このマウスはフェオメラニン含有量が多く、ユーメラニン含有量が少ないため通常のSCF-Tgマウスより格段に紫外線感受性が高く、ヒトの皮膚により近いと考えられる(特許番号 第4406696号)。このマウスを用いることにより、外用する成分の紫外線発癌機能やSunscreen剤としての能力を検討することができた。

 

<優れた成果が上がった点>

 1. LTBP-2欠損により生じる水晶体脱臼に対し、LTBP-4の過剰発現による治療の可能性を示した。本研究において作成した遺伝子変異マウスは肺気腫や水晶体脱臼などの疾患におけるモデルマウスとして利用できることがわかった。

 

2.接着制御破綻よっておこる自己免疫病態モデルを作出できた。生体組織イメージング技術等を樹立し接着調節が生体防御だけでなく自己寛容の確立・維持にも関与していること、その破綻が自己免疫発症につながることを明らかにできた。

 

3.CD133陽性ヒト造血幹細胞をNOGマウスの骨髄内に直接移植することで、高い移植効率の達成に成功した。同マウスモデルを用いて、複数の候補薬剤の投与実験において個体レベルでの抗HTLV-1活性が実証されたことから、今後、さらなる化合物の同定と、作用機序解明への応用が期待される。

 

4.ヒト臍帯血由来造血幹細胞の濃縮分子マーカーとして、CD133およびGPI-80(特願2014-090292)の同定に成功した。 

 

5. Tsc1遺伝子改変マウスによって全く新しい腎嚢胞の病態モデルを見出した。

  

<課題となった点>

 遺伝子改変マウスの作成は従来のES細胞を用いたジーンターゲティング法は時間がかかり、ゲノム編集による迅速な遺伝子改変マウスの学内作成が研究促進に不可欠である。Crsp/Cas9を用いた方法は可能になったが、まだ支援体制としては不十分である。

 

<自己評価の実施結果と対応状況>

 研究者による中間評価に基づき、連携促進を図る。学長のリーダーシップにより促進されるプロジェクトについて資金援助、私学振興学術研究(学術研究、若手奨励研究)の採択課題支援、さらに連携を促す試みとして学内研究紹介の毎月開催(研究トークランチ)、学内研究助成(KMUコンソーシアム)を行う。

 

 <外部(第三者)評価の実施結果と対応状況>

 該当なし

 

<研究期間終了後の展望>

 大学による疾患モデル動物センターの支援を継続し、展開研究および未発表の疾患モデル動物プロジェクトを促進する。これらの疾患モデル動物を学内研究資源として独自性の高い基礎・臨床研究の連携による研究を発信する。

優れた成果が上がった点

 1. LTBP-2欠損により生じる水晶体脱臼に対し、LTBP-4の過剰発現による治療の可能性を示した。本研究において作成した遺伝子変異マウスは肺気腫や水晶体脱臼などの疾患におけるモデルマウスとして利用できることがわかった。
2.接着制御破綻よっておこる自己免疫病態モデルを作出できた。生体組織イメージング技術等を樹立し接着調節が生体防御だけでなく自己寛容の確立・維持にも関与していること、その破綻が自己免疫発症につながることを明らかにできた。
 
3.CD133陽性ヒト造血幹細胞をNOGマウスの骨髄内に直接移植することで、高い移植効率の達成に成功した。同マウスモデルを用いて、複数の候補薬剤の投与実験において個体レベルでの抗HTLV-1活性が実証されたことから、今後、さらなる化合物の同定と、作用機序解明への応用が期待される。
 
4.ヒト臍帯血由来造血幹細胞の濃縮分子マーカーとして、CD133およびGPI-80(特願2014-090292)の同定に成功した。 
 
5. Tsc1遺伝子改変マウスによって全く新しい腎嚢胞の病態モデルを見出した。 

課題となった点

 遺伝子改変マウスの作成は従来のES細胞を用いたジーンターゲティング法は時間がかかり、ゲノム編集による迅速な遺伝子改変マウスの学内作成が研究促進に不可欠である。Crsp/Cas9を用いた方法は可能になったが、まだ支援体制としては不十分である。

研究期間終了後の展望

 大学による疾患モデル動物センターの支援を継続し、展開研究および未発表の疾患モデル動物プロジェクトを促進する。これらの疾患モデル動物を学内研究資源として独自性の高い基礎・臨床研究の連携による研究を発信する。 

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