病気の辞典 vol.010(2017/04/15)網膜剥離

眼科
教授 西村 哲哉

網膜剥離



概要

網膜剝離とは、眼球の中の網膜と言う、カメラのフィルムのような組織が剥がれてしまう病気です(図1、2)。網膜が剥がれると、その部分は見えなくなりますので、剥がれた範囲に応じて、視野(見える範囲)が狭くなり、全体が剥がれると、ほとんど見えなくなってしまいます。早く治療をしないと、失明します。網膜剝離には裂孔原性網膜剥離、牽引性網膜剥離、滲出性網膜剥離がありますが、ほとんどは裂孔原性網膜剥離ですので、裂孔原性網膜剥離について説明します。

(図1)網膜剥離の模式図。網膜に裂孔を生じ(赤矢印)、その周囲の網膜(紫色)が剥離している。
 

(図2)網膜剥離の眼底写真。裂孔を生じ(矢印)、網膜全体が波打ったように剥離している。



原因

網膜の一部に弱い部分があると、そこに裂孔(裂けめ)を生じて、そこから眼球内の液が網膜の裏側に入り込み、網膜が剥がれます。裂孔は格子状変性という病巣に関連して自然に発生することがほとんどですが、殴られたり、ボールが目に当たったりした場合に、眼球が強く変形して裂孔ができ、網膜剥離になる場合もあります(外傷性網膜剥離)。



症状

網膜剥離はまず網膜に裂孔を生じて、そこから網膜が剥がれて拡大しますので、進行とともに症状が変化します。裂孔が出来る前、あるいは裂孔を生じた時には飛蚊症光視症と言う症状がでます。飛蚊症は蚊が飛んでいるように見えると言う症状で、ススやゴミ、蚊のような影がたくさん見えます。形は糸屑のようなものから丸いもの、リング状など様々です。裂孔の部分の血管が切れて目の中に大量出血すると、かすんでほとんど見えなくなることもあります。光視症は何も光っていないのに、稲妻のような閃光が見える症状です。
 次に網膜剥離が発生すると、その範囲や部位に応じて視野が狭くなってきます。「上から幕が降りて来た」とか、「足下が暗くて見えない」などの訴えがありますし、さらに進行すると視力が低下し、全体がほとんど見えなくなります。50歳以上の方では進行が早く、数週間で上記のような症状が進行しますが、20〜30歳代の若い方では進行が緩やかなので、かなり進行するまで気づかれないことがあり、コンタクトレンズの健診などで、たまたま発見されることも希ではありません。視野が中心近くまで欠けてきて、変視症(物がゆがんで見える)で気づかれる場合もあります。
 



治療

裂孔を生じただけで、まだ網膜が剥がれていない場合にはレーザー治療だけで網膜が剥がれないように固めることができます(図3)。入院は必要ありません。

(図3)裂孔の周囲がレーザーの瘢痕で固められている。

しかし、網膜が剥がれてしまうと本格的な手術が必要です。手術は大きく分けて、強膜内陥術または硝子体手術が行われます。20〜30歳代の若い方や、網膜剥離が軽症の方では強膜内陥術が行われることが多く、それ以外では硝子体手術が行われます。それぞれにメリット、デメリットがありますが、最近では視力が早く回復する硝子体手術が行われることが多くなっています。



総合医療センターで行う治療

当院では最新の硝子体手術装置を導入し、90%以上の方に硝子体手術を行っています。最近では手術侵襲がより小さい27Gシステムも導入しており、眼球に僅か0.3mmの穴を3カ所開けるだけですので、縫合や抜糸の必要はなく、術後の回復が大変早くなっています。年間の手術件数は約160件で、重症例を含めて初回手術での復位率は95%、最終復位率99.5%を得ています。



患者さんへ

飛蚊症や光視症、変視症、視野狭窄、視力低下に気づいたら、早めにお近くの眼科を受診して下さい。網膜裂孔や網膜剝離と診断されたら、早急に処置が必要で、治療が遅れると視力回復が難しくなります。飛蚊症については、生理的飛蚊症と言って、病的なものではないことも多いので、網膜に異常がなければ過度に心配する必要はありません。
網膜剥離の危険因子として、強度の近視、アトピー性皮膚炎、眼球打撲、網膜剥離の家族歴などがありますので、該当する方は症状がなくても一度眼底検査を受けられることをお勧めします。
 

ページの先頭へ

注:記載内容や医師情報は掲載時点のものです。 詳しくは担当診療科にご確認ください。


眼科 教授西村 哲哉(にしむら てつや)

専門分野:網膜・硝子体、白内障

認定資格:眼科専門医

眼科の詳細ページを見る