喉頭癌と無喉頭発声・関西喉友会

関西医科大学 滝井病院 耳鼻咽喉科 医学博士 岩井 大

1.はじめに

進行した喉頭癌(さらに下咽頭癌や、脳障害による嚥下障害)に対しては、しばしば喉頭全摘出術が行われます。術後は喉頭(声帯)がなくなり、声を失うことになります。これを補う方法として無喉頭発声(食道発声・気管食道シャント発声、電気喉頭など)が用いられます。

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2.関西喉友会

このうち食道発声は、練習しても半年以上かかり、また話せるまでになる人は約3割強とされています(下記の参考文献1-3)。関西医大滝井病院では毎週土曜日に喉頭を失った人たちの集会(関西喉友会)を開き、親睦と声の練習をしています。岩井はこの会の顧問をしております。和やかな会ではありますがレベルは高く、2000年の第1回食道発声大会では優勝者を輩出しました。

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3.シャント発声

食道発声を改良した方法として、気管の後ろの壁から食道にトンネル(シャント)を作り、肺・気管からの空気を口に導き発声する気管食道シャント発声があります。1980年頃アメリカで開発された方法ですが、当科ではいち早く採用し、改良を重ねてきました(4-6)。この方法なら、術後2ヶ月で8ー9割の人が話せるようになります。気管食道シャント発声をしていると、食道発声もしやすくなります(7)。日本では普及が遅れいていましたが、徐々に広まってきています。当科と関西喉友会では、食道発声とともにこの方法を推し進め、無喉頭発声の向上に努めています。

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4.新しくシャントを作製する

当科ではまた、単純に喉頭の手術をするのでなく、癌によっては放射線化学療法と組み合わせたり(8)、無喉頭発声の仕組みを研究し術後に食道発声や気管食道シャント発声ができやすくなる手技(2次性シャント作製術)を考案しています(9-13)。喉頭を取る手術を勧められた方、喉頭を取った後に発声ができないでお困りの方は、一度ご相談いただければと存じます。

連絡先:関西医科大学 滝井病院 耳鼻咽喉科 外来(電話:06−6992−1001

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参考文献

  1. 岩井大:ボイスプロステーシス(シャント発声器具)による音声再建術.耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域のShort Stay Surgery.耳鼻咽喉科診療プラクティス第5巻(池田勝久、編集)、pp132-137、文光堂、東京、2001
  2. 岩井大.喉頭摘出術後の音声再建—器具を用いる方法.気管食道領域の再建.第54回日本気管食道科学会 シンポジウム. 2002年11月6-8日
  3. 岩井大:シャント.喉頭摘出後の音声獲得.頭頸部腫瘍術後の機能回復.耳鼻咽喉科・頭頸部外科のリハビリテーションー症例を中心に.耳喉頭頸79,211-220, 2007
  4. Iwai H, et al.: Secondary shunt procedure for alaryngeal patients in an outpatient clinic. Acta Otolaryngol 122, 661-664, 2002(喉頭摘出術後に行う気管食道シャントの作製法を考案)
  5. Iwai H, et al.:Front-loading of Groningen voice prosthesis in alaryngeal patients requesting prosthetic replacement. J Laryngol Otol 177, 633-636, 2003(気管食道シャントに対する「グロニンゲン」シャント器具の簡便な装着法を考案)
  6. 岩井大:グロニンゲンを用いたシャント発声法の応用.第19回日本気管食道科学会認定気管食道科専門医大会 シンポジウム.2009年4月25-26日
  7. Iwai H, et al.:Early acquisition of oesophageal phonation by shunt phonation. 13rd World congress for Bronchoesophagology (WCBE), Barcelona, Spain, 2004. 6.20-23(気管食道シャント発声をしていると食道発声が早く獲得できることを世界で初めて報告)
  8. Iwai H, et al.:Preoperative concurrent chemoradiotherapy versus pre- and postoperative radiotherapy for advanced hypopharyngeal carcinoma: a single-center study. ANL 35, 235-241, 2008(下咽頭癌に対する放射線化学療法と手術との組み合わせ治療の有用性につき報告)
  9. Iwai H, et al.: Vocal restoration of laryngectomized cases of laryngeal or hypopharyngeal cancer. 11th World Congress for Bronchoesophagology (Ed:Akinori Kida)シンポジウム, 2000 年6月7-10日(術後にシャント発声ができるようになる下咽頭癌手術の考案)
  10. Iwai H, et al.:Neoglottic formation from posterior pharyngeal wall conserved in surgery for hypopharyngeal cancer. Auris Nauris Larynx 29, 153-157, 2002(下咽頭癌で術後声の出る手術法を開発)
  11. 岩井大:下咽頭輪状後部癌.口腔・咽頭・喉頭領域.手術範囲と術式.JOHNS 20, 1378-1381, 2004
  12. 岩井大:脳神経外科・頭頸部の癌(口腔癌含む).実力医の履歴書.手術を受けるならこの先生.中村康生編.外科系III, pp348、ライフ企画、神奈川、2008
  13. Iwai H, Konishi M, Ando N, Baba S, et al. : Evaluation of secondary shunt procedure for alaryngeal patients on an outpatient clinic. 18th WCBIP/WCBE World Congress 2014.4.13-16 Kyoto (気管食道シャントを作ってもらっていない喉頭全摘後の患者さんにシャントを作る方法と、その成績)

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