疾患モデル動物センター
研究代表者挨拶
近年ヒトゲノムプロジェクトの進展によって難治性疾患や生活習慣病の関連遺伝子が次々と明らかにされ、原因解明から治療や予防法の確立に研究を発展させることが急務となっている。これらの疾患は環境要因を含めた多因子の相互作用によって起こる高次生命現象であり、試験管内だけの解析では不十分であることは明白である。本学は21世紀COEプログラム骨髄移植の研究から「場の再生・修復」研究を大学の特色ある研究として推進してきた。この研究過程から高次生命現象の破綻と修復・再生研究に適合した疾患モデル動物が作出され、in vivo イメージングなどの解析技術等の開発などにより優れた成果を挙げることができた。
そこで遺伝子改変動物等を用いた個体レベルでの解析を掘り下げるとともに、ヒト疾患への応用展開を促進させるため、「疾患モデル動物センター」を設立の必要性が生じた。平成25年度本学学舎移転によって研究拠点が枚方地区に移動する。そこで疾患モデル動物を用いた研究拠点を形成する。拠点形成によって分子レベルの解析から疾患モデル動物の樹立、in vivo解析を充実させ、難治性疾患の解明から治療につなげる領域横断的研究と次世代医学研究者の育成を推進することを目的とした。
本拠点形成は、医学の特定分野を限定せず、造血・免疫、癌、神経、老化、代謝に関連する難治性疾患のモデル動物の樹立、病態解析と予防治療を目標とする。21世紀COEプログラムから得られた成果を発展させ、細胞外マトリックス、造血幹細胞、組織幹細胞、癌細胞、細胞接着因子、それらを制御する細胞内因子などに異常をきたすモデル動物を作出し、各組織・臓器の場の調節とその破綻を解析し、新知見に基づく新規治療法の開発までを領域横断的に行う。
研究対象は、造血幹細胞、間葉系幹細胞、免疫系細胞、消化器系、循環器・呼吸器系、神経系、皮膚組織等であり、これらの細胞外環境と細胞の増殖・分化、機能、細胞動態に関するものである。手法として、遺伝子改変による疾患モデル動物、細胞、組織のイメージング技術、幹細胞の同定・解析技術、移植技術、蛋白質相互作用、シグナル伝達解析などを活用する。
5年間の拠点形成活動および学長主導の連携促進施策によって様々な分野の情報交換や共同研究が促進され、若手研究者の研究マインド育成に役立ち、細胞外マトリックス、感染・免疫、造血、神経、癌の分野で独自性の高い研究が育成された。すでに創薬に向けて臨床的応用が進行している分野、萌芽的であるが有望な成果もあり、今後の発展が期待される。5年間で作出された疾患モデルの成果はデータベースとして公開し、学内外との連携促進を図るとともに、疾患モデル動物センターを拠点として独自性の高い本学研究を展開させていきたい。
研究代表者 木梨達雄
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