卒中の意味をご存知でしょうか?卒中とは「卒然として邪風に中(あた)る」、つまり「突然悪い風に当たって倒れる」という意味で、古くは平安時代の書物にもその記載を認めることができます。その後、脳が原因であることが明らかになり、脳卒中と称されるようになりました。つまり、脳卒中は病名ではなく、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などを含めた一般的な総称であり、正式には「脳血管障害」と表現することになります。
今回は、脳卒中の中で最も患者さんが多い「脳梗塞」について説明します。脳梗塞は、脳を養う血管が詰まることで発症し、様々な症状を認めますが、代表的な症状としては「片方の手足が動かしにくい」「うまく話すことができない」などが挙げられます。ご自身やご家族が脳梗塞と気がつくために最も重要なことは、「ある時期を境に突然状態に変化が起こった」ことを見逃さないことです。まさに「卒然と」脳梗塞は発症するのです。
なぜ脳梗塞を早期に診断することが重要なのか?それは、近年ようやく脳梗塞が治療可能な病気になったからです。しかし、脳梗塞の治療はいつでも可能なわけではありません。脳組織は非常に脆弱であるため、脳梗塞を発症してから数時間もすると完全に脳組織が壊れてしまいます。そのため、脳組織が壊れる前に素早く治療を行う必要があります。その治療法を「tPA静注療法」と呼びます。しかし、この治療を受けることができるのは、発症から4.5時間以内の患者さんだけです。ですので、突然普段とは異なる症状が出現した時は、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
*当院では「tPA静注療法」に加え、カテーテルを用いた脳血管内治療も積極的に行っております。