病気の豆知識 vol.001(2016/04/01)アレルギーの新しい治療法


耳鼻咽喉科・頭頸部外科 准教授 朝子 幹也

アレルギーの新しい治療法

アレルギー性鼻炎で苦しんでいる患者さんは世界中で増加の傾向にあり、我が国でも大きな問題になっています。特にスギ花粉症は年々花粉の数も増加の傾向にあり、患者さんの数も著しく増加しているため、いまや罹患(りかん)率が全人口の3割を超える国民病となっています。治療には薬物療法や手術がありますが、抗原(アレルゲン)を少しずつ身体の中に注射をしていき、身体を慣れさせる抗原特異的免疫療法は、唯一根治が望める治療法で、注射を用いた免疫療法は100年以上の歴史があります。

抗原特異的免疫療法のなかでも、2014年からはスギ花粉症に対する「舌下免疫療法」が保険適用になりました。従来のような注射をせず口の中にエキスを垂らすだけの簡単な方法で治療が可能であり、また注射法と比べて重い副作用が少ないことが特徴です。
当科では保険適用となる前の臨床治験の頃より治療の開発に携わってきており、TVや新聞などメディアの取材も受けております。従来のくすりの治療と比べて、症状がない期間も服用を続ける必要があり、2年から3年かけてアレルギー体質を根本的に改善する治療です。少し根気のいる治療ではありますが、痛みもなく重篤な副作用も出にくいので、これまで花粉症に長く悩まされていた方や、花粉飛散期間中症状が非常に重くなる方、近い将来妊娠や出産の予定があり、くすりが使いにくくなる可能性がある方などにおすすめです。

現在はスギ花粉症に対する治療薬のみが発売されていますので、ダニアレルギーやその他の花粉症などを持たれている人にはよい適応にはなりませんが、春先にいつも強い症状が出る方は、当科の医師にご相談ください。
またこの治療法は、講習を受けるなど一定の条件を満たした医師のみが処方できるシステムになっています。当科では開業医の先生方とも連携をとり、副作用の出現頻度が低くなった後は、ご近所の先生のところでも処方を出していただけるようなシステム作りも行っています。なお当病院は大阪地区でも限られたアレルギー専門医育成のための研修指定施設でもあります。

2015年1月にはダニ抗原舌下錠を用いた舌下免疫療法も厚生労働省から承認され、近い将来ダニアレルギーに対しても保険適応が見込まれています。舌下免疫療法は今後ますます期待がもたれており、目が離せない新しいアレルギー治療の選択肢のひとつです。

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注:記載内容や医師情報は掲載時点のものです。 詳しくは担当診療科にご確認ください。
「病気の豆知識」リーフレットは院内でも配布しています。 


耳鼻咽喉科・頭頸部外科 准教授朝子 幹也(あさこ みきや)

専門分野:鼻科学、アレルギー
認定資格:日本耳鼻咽喉科 専門医・研修指導医
     日本アレルギー学会 専門医・指導医
好きな食べ物:美味しいものなら何でも
趣味:写真・音楽鑑賞・観劇
出身地:枚方生まれの高槻育ち
血液型:A型

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