病気の豆知識 vol.011(2016/07/19)暑い季節の食中毒予防


呼吸器・感染症内科 診療教授 宮良 高維

暑い季節の食中毒予防

冬の食中毒はノロウイルスが中心ですが、暑い季節は細菌による食中毒が起こりやすくなります。その理由は、細菌が増えやすくなるからです。たとえば黄色ブドウ球菌を35℃に保った試験管の中で増やしますと、4時間程度で1個の菌が簡単に1万個以上に増えます。これは、例えば朝作ったおにぎりやお弁当に少量の細菌が付いていたら、作ってすぐに食べる分には食中毒を起こしませんが、昼頃には細菌や毒素が発症に十分な菌量まで増えるということを意味します。
食中毒防止について、以下にいくつか注意点を挙げました。
① 調理を清潔に行うために、まず袖をまくり上げ、手首まで十分に流水と石鹸で洗ってから始めましょう。また、指に傷や手荒れがある場合は、黄色ブドウ球菌が付きやすくなっています。新しい使い捨てのビニール手袋やラップの使用をお勧めします。それから、生肉を調理した包丁やまな板等は、カルキや熱湯を使って消毒するまでは使いまわしを避けましょう。
② 調理した食事やお弁当は早めに食べるか、冷蔵庫で保管して温め直すなど、一両日中には食べるようにしてください。しかし「エルシニア菌」の場合は、冷蔵庫内(4~5℃)であっても増えてゆきます。
③ 海産物の刺身などは、夏はビブリオ属の菌量が増えます。健康な方なら大きな問題とはなりませんが、血糖が高い糖尿病の方、肝硬変の方は重症の全身感染症を発症する場合があり、お勧めできません。
④ 季節を問わず、食材に最初から病原体が付いている場合もあります。いくら新鮮でも、鶏肉[キャンピロバクター]、ウシ・ブタを含む四本足の動物の肉[サルモネラ、O-157]、淡水産の魚介類[寄生虫]、また、ときに生卵[サルモネラ]は、中まで完全に火が通っている方が安全です。特に四本足の動物の肉と淡水産の魚介類(含むケジャン料理)は、寄生虫感染[肺吸虫など]の点からも、季節を問わず生食は避けることをお勧めします。同様にリステリア菌を含む可能性のある、外国産の生ハムや生チーズは、生物製剤などの免疫抑制薬使用中の方や高齢者は髄膜炎を発症する場合もあり、お勧めできません。
いろいろと申し上げましたが、安全でおいしいものは他にもたくさんありますし、加熱は最も安全で確実な殺菌方法なので、十分加熱した料理をおいしくいただきましょう。

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注:記載内容や医師情報は掲載時点のものです。 詳しくは担当診療科にご確認ください。
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呼吸器・感染症内科 診療教授宮良 高維(みやら たかゆき)

専門分野:呼吸器・感染症
認定資格:日本内科学会総合内科専門医
日本感染症学会指導医
日本呼吸器学会指導医
好きな食べ物:沖縄そば、ゴーヤチャンプルー
出身地:沖縄県

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