デング熱は、東南~南アジア、南米などの熱帯・亜熱帯地域で流行している病気です。ところが、2014年の夏から秋にかけて、東京の代々木公園を中心に約70年ぶりとなるデング熱の国内感染例が発生しました。しかし、実は2013年の8月に京都などを旅行したドイツ人女性が帰国後にデング熱を発症し、わが国で感染した可能性が疑われていました。ということで、デング熱はとても珍しい感染症なのですが、わが国でもかかる可能性がゼロではないということが判ったわけです。
この病気は、マラリアと同じく蚊によって感染する病気です。感染の元となるのは、海外で感染した日本人帰国者や外国人旅行者ですが、わが国の中ではヒトスジシマカ(ヤブ蚊の仲間)が、感染者からデングウイルスを運びます。直接ヒトからヒトへは感染しませんので、発症した患者さんの看病などで感染することはありません。
蚊に刺されたあと病気を発症するまでには2~15日(大半は3~7日)かかりますが、発症しない人も半数から7割程度はいるものと考えられています。
症状は、突然の発熱(38℃以上)、頭痛、目の奥の痛み、結膜(白目)が赤くなる、胸部やおなかから赤い発疹が出始め顔や手足に広がる、筋肉や節々が痛くなるなどです。だいたい1週間以内に自然に軽快するのですが、熱さましには血が固まりにくくなるアスピリンの系統は不適当で、アセトアミノフェンが勧められています。また、デング出血熱の様に重症化する割合は1~5%と少なく、それも二回目以降の感染者が中心ではないかと考えられています。
熱帯地域の旅行中は、マラリア、チクングニアなど他にも蚊に刺されて感染する病気がありますので、基本的な防護は、海外でも国内でも蚊に刺されないことです。ご自宅周辺では、屋外の水たまりや空き缶、古タイヤ、バケツなど水がたまりやすいものをなくして蚊の発生を減らすことも大切です。