膵がんは、がんによる死亡数の第4位に位置し、年々増加の傾向を示しています。腹痛、体重減少、黄疸、耐糖能異常(糖尿病)などが主な症状ですが、初期には無症状のことが多く、早期発見が非常に困難とされています。また極めて悪性度が高く、小さながんであってもすぐに周囲(血管、胆管、神経)へ広がったり、近くのリンパ節への転移、肝臓などへの遠隔転移を伴うことから、治療が難しいがんのひとつとして知られています。
治療の基本は、手術でがんを切除することです。しかし膵臓を含め、がん周辺の臓器、リンパ節など広い範囲を切除してしまうと、激しい下痢や、食事が少ししか食べられなくなるといった後遺症が問題となります。このように治療の難しい膵臓がんですが、近年手術前に放射線治療や抗がん剤治療を併用して周囲へ広がったがん病巣をあらかじめ制御することで、手術で切除する範囲を最小限にすることができるようになってきました。
膵臓は胃・十二指腸・肝臓・腎臓といった比較的放射線のダメージを受けやすい臓器に囲まれており、これまでは放射線治療が行いにくい場所とされてきましたが、近年は高精度放射線治療技術を用いることによって、できるだけ臓器に放射線を当てずに安全に治療できるようになっています。当院でも強度変調放射線治療(IMRT)を用いて手術で取りきれない部分をしっかり照射し、その後に手術を行うことで膵がんの根治を目指す治療を行ってまいります。