胆嚢(たんのう)は肝臓の下にくっついている、なすびのような大きさと形の袋状の臓器です。肝臓で作った胆汁を一旦ためておく貯水池の役目をもっています。食事をとると胆嚢が収縮し、ためている胆汁を押し出します。胆汁は胆管を通って十二指腸に分泌されます。そこで食事と混ざって脂肪を溶かして吸収しやすくしています。永年胆汁をためたり出したりしている間に、徐々に胆嚢内に胆汁中の成分が出てきて泥や砂、石となるのが胆石です。それが胆汁とともに流れて胆嚢管に詰まると胆石発作や急性胆嚢炎が起こります。胆管に流れ落ちると十二指腸の出口に詰まって胆管炎や黄疸、肝炎、膵炎が起こります。胆石の症状は「胃が痛い」と感じる方が半数以上おられます。胃の疾患も胆石も同じような部位に痛みを感じることが多いからです。
胆石は遺伝要因があり、親子兄弟で胆石の方も多く見られます。また胃や食道の手術を受けた方は胆石ができやすくなります。胆石は大変多い病気のため、胆石の手術は最も多い手術の一つです。胆石の治療は胆嚢を全部取り除く手術です。胆嚢が胆石のできる原因ですから、胆石だけを取る手術は現在行われません。胆嚢を摘出すると胆汁をためる働きは失われますが、胆汁は肝臓から十二指腸へ直接流れます。そのため術後下痢、軟便になる方もいますが、大部分の方は自然に軽快します。
胆石を永年持っていると胆管に石が落ちることがあり、全体として胆石を手術する方の2割が胆管結石を持っています。永年胆石を持っている方は、石が胆管へ落ちるリスクが年月とともに高くなるため、高齢者ほど胆管結石を持っている人が多くなります。胆管結石は当院では9割の方が消化器内科で内視鏡で取り除くことが可能です。
無症状の胆石は今までは手術する必要は無いと言われてきましたが、現在日本は高齢者が大変増えています。そのため若い頃から胆石を持っているが無症状のため放置していた方が、高齢になってから胆石の症状で手術しなければならないケースが増えています。