「ディスペプシア」とはまた耳慣れない言葉でしょう。イノベーション、コンプライアンス、ガバナンス……またわけの分からないカタカナ語かとお嘆きの方、すみません。だけど適切な日本語がないのだから仕方ありません。以前は「消化不良」とか「胃腸症」と訳されていましたが、あまり的確ではないということで最近はディスペプシアと表されています。
ディスペプシアとは胃痛や胃もたれ、食後の不快感などといった上腹部の症状のことで、成人の約9%にみられるありがちな症状です。胃潰瘍や胃癌でも起こりますが、約半数は胃カメラなどの検査をしてもそういった異常が見付かりません。この病気の原因は胃の機能異常で、特に運動の異常と知覚過敏の二つが大きく関係しています。動きが悪いと食べた時に胃が拡がらなかったり、入った食物がなかなか腸に出て行かなかったりするためすぐにお腹が一杯になってしまいますし、知覚過敏があると胃酸や香辛料などの刺激で簡単に痛みが起きます。治療には規則正しい食事や高脂肪食を避けるなどの食生活改善と、胃酸を抑える薬や動きを改善する薬などがあります。ただしこの病気は薬の薬理学的な作用だけでなく、効果への期待や服薬による安心感による効果も35~40%あると言われています。実際、検査で異常がなく不安でいた人が、こういう病気があって重篤なものではないと理解しただけで症状が改善することも珍しくありません。