病気の豆知識 vol.044(2017/12/01)胸腺と胸腺腫


呼吸器外科 教授 村川 知弘

胸腺と胸腺腫

 胸腺(きょうせん)は、免疫系の仕事をする臓器で左右二葉からなっています。胸腺は胎児の頃に発生します。頸部に発生する甲状腺の下から縦隔(じゅうかく)とよばれる胸の中へ降りてくるので外からは見えません。縦隔とは左右の肺に囲まれた場所のことであり、心臓や気管や食道があります。胸腺は心臓の前にあります。

 胸腺腫(きょうせんしゅ)と胸腺がんは胸腺からでる悪性の腫瘍です。腫というのは腫瘍(しゅよう)という意味です。胸腺腫は悪性腫瘍全体の中では少ないですが、呼吸器外科で手術する縦隔腫瘍の中では最も多いものです。
胸腺腫は発育の比較的遅いがんなので対応しやすい腫瘍です。従って、発見したら、経過観察ではなく、積極的に手術を行うことが必要です。
胸腺腫が進行(3-4期)しているときは、手術以外にも化学療法や放射線療法を追加して行うこともあります。また、胸腺腫は重症筋無力症を合併する事があり、このような場合は拡大胸腺・胸腺腫摘除術という手術を行います。
 

【胸腺腫の病期】

 1期 胸腺腫が胸腺被膜の中にある時期 
 2期 胸腺腫が胸腺被膜に浸潤している時期 
 3期 胸腺腫が胸腺周囲の臓器(肺、心膜など)に浸潤している時期
 4a期 胸腺腫が胸膜や心膜に播種(胸腺と離れて腫瘍が広がっている状態)している時期
 4b期 胸腺腫が遠隔転移(肝臓や骨などへの転移)している時期 

 

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注:記載内容や医師情報は掲載時点のものです。 詳しくは担当診療科にご確認ください。
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呼吸器外科 教授村川 知弘(むらかわ ともひろ)

村川 知弘

専門分野:呼吸器外科一般
認定資格:呼吸器外科専門医
外科専門医
出身:山口県
好きな食べ物:炊きたてのごはん
趣味:毛鉤での渓流釣り

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