認知症とは、正常に働いていた脳の機能が低下し、記憶や思考への影響がみられる病気です。原因疾患として最も多いのはアルツハイマー型認知症で、神経細胞が減少し脳の一部が萎縮していきます。次いで多いのは血管性認知症で、全体的な記憶障害ではなく一部の機能は保たれている「まだら認知症」が特徴です。また最近ではありありとした幻視や認知機能の変動が特徴的なレビー小体型認知症が注目されてきています。
初期の認知症は加齢による単なる物忘れと区別がつきにくいものです。加齢による生理的なもの忘れでは日常生活に支障をきたすことはなく、本人にもの忘れの自覚があるのが一般的です。いっぽう認知症によるもの忘れでは、本人に自覚がない場合が多いのです。さらに抑うつやひきこもり、やる気の欠如、被害妄想、話が通じにくい、外出すると迷子になる、お金の勘定ができなくなった、などのサインが出てきたときには、神経内科で相談してみましょう。
アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症を完全に治す治療法はまだ有りませんので、できるだけ早い段階で診断し症状の軽いうちに病気の進行を遅らせることを目指します。血管性認知症であれば、動脈硬化の危険因子(高血圧や糖尿病など)を治療することにより認知機能の悪化を予防することを目指します。特発性正常圧水頭症、甲状腺機能低下症、非けいれん性てんかん、薬剤誘発性認知症などはそれぞれの原疾患の治療により「治療可能な認知症」と言えます。
「高齢だから」「年のせい」とあきらめることなく、きちんと診断して適切な治療を受けることをお勧めします。