大動脈瘤(りゅう)は大動脈が部分的にコブのように拡張する病気です。破裂すると本邦の死亡原因の第10位(女性は第9位、男性は11位)に入る恐ろしい病気です。しかし、破裂するまで症状がないことが特徴でサイレント・キラーと呼ばれています。胸部大動脈瘤が大きくなると嗄声(させい)というしわがれ声が出現する場合や、嚥下困難(食べ物の通過が困難になる)が出現することがあります。原因は動脈硬化症や炎症性疾患といわれており、遺伝的素因が強い病気です。喫煙と高コレステロール血症(これも遺伝病です)が動脈瘤の発症に強く関係しています。
治療法は開胸による人工血管置換術と血管内治療である胸部ステントグラフト内挿術があります。薬物治療はありません。手術適応は紡錘形(左右対称に拡大)では最大径60mm以上が、嚢状(片方に突出)では50-55mm以上が手術適応です。上行大動脈瘤では人工心肺を用いて人工血管置換術が行われます。弓部大動脈瘤でも人工心肺を用いた人工血管置換術が行われますが、腕頭動脈(弓部大動脈の最初の分枝)より大動脈瘤までの距離が20-25mm以上あれば、チムニー(煙突)テクニックを用いた胸部ステントグラフト内挿術が行われます。胸部下行大動脈瘤ではほとんど全て胸部ステントグラフト内挿術が行われます。
2018年7月よりハイブリッド手術室(ロボットアーム血管造影装置を備えた手術室)が稼動しました。患者さんの体の負担が少なくなる胸部ステントグラフト内挿術を積極的に行なっております。お気軽にご相談ください。