肺がんの抗がん剤治療には、大きく分けて「細胞障害性抗がん剤」「分子標的薬」「免疫療法」の3つのグループがあります。「細胞障害性抗がん剤」は、かなり以前からある薬剤で、副作用として嘔気や脱毛、白血球が低下することなどがあります。多くの方にとって、抗がん剤のイメージと言えば、この治療のことを指すのではないでしょうか。
「免疫療法」は、最も新しい治療であり、自身の免疫力(リンパ球)を利用して、抗がん作用を発揮し、一部の人ではありますが、年単位で治療効果が得られることも確認されています。
「分子標的薬」は、がん細胞の特定の分子を標的として、攻撃することにより治療効果を発揮する薬剤です。標的となる分子は、通常、がん細胞が生存・増殖するために必要な部分であるため、治療によりがん細胞は縮小したり、死滅したりすることとなります。
この治療は、肺がん患者さんであれば誰でも適応となるのではなく、患者さんから採取されたがん細胞を検査して、特定の遺伝子変異が確認された場合に各々の薬剤が選択されることが一般的です。具体的には「上皮成長因子受容体(EGFR)」「未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)」、「ROS1」「BRAF」などの遺伝子変異があります。
尚、分子標的薬が適応となるのは、上記のうちではEGFR遺伝子変異が最も多く(約30-40%)、非喫煙者に多いとされています。その他の遺伝子変異については、一般的に陽性率は数%と、比較的少ないとされています。
使用される患者さんが特定されることや、標的とする分子が特定されるため、分子標的薬による治療を「個別化医療」や「ピンポイント治療」と評価することもあります。そのため、他の抗がん剤よりも効果が得られる確率が高く、一般的には約70-90%の患者さんで何らかの治療効果が得られるとされています。また治療は内服薬であり、副作用も比較的軽度とされています。