患者さんから採取された検体は通常ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色という方法で赤色(細胞質)と紫色(核)に染め分けることで顕微鏡観察を容易にしています。
免疫染色とは正式には免疫組織化学とよばれ、HE染色などでは通常不可視な特定の構造を有するタンパク質の一部である抗原を可視化する技術です。この反応は、生体の異物排除機能の一つである抗原・抗体反応を応用することで可能となり、1955年に蛍光色素を用いた方法で開発され現在では、多くの病理検査室で自動化された機器を用いて染色が行われています。免疫染色は、いまや原発不明癌の原発巣推定や腫瘍の組織亜型分類など病理診断には必須の技術となっています。
近年開発される抗がん剤は乳癌に対するHER2タンパクに代表されるように、腫瘍細胞に特異的に高発現している物質をターゲットにするものが多く、これらの抗原タンパク発現を定量化するために免疫染色が用いられ治療の可否の判断に重要な役割を果たすようになってきています。