概要

肝臓は「沈黙の臓器」と言われており、発見された時には進行していることも少なくありません。

当科では低侵襲な腹腔鏡手術から、超高難度手術とされる拡大肝切除術に伴った血管合併切除および再建術を積極的に取り組んでおり、豊富な経験*に基づき、徹底した癌根治手術を追究しております。また手術前後の肝臓領域の抗癌化学療法も数多く行っております。
 

*当院は肝臓がん手術件数近畿地区1位です。
週刊朝日MOOK「手術数でわかるいい病院2022」で、昨年度に引き続き、当院が肝臓手術実施件数近畿地区1位と掲載されました。
(全国集計では2位となります)

 承諾番号「22-1176」(朝日新聞出版に無断で転載することは禁じられています)
 

我々は患者さんそれぞれの肝臓の状態を見極め、安全な手術を行えるよう常に心がけています。また手術ができないような進行癌の場合でも、肝臓内科や放射線科と連携し、予後の改善を目標とした集学的治療を行っています。転移性肝癌、特に大腸癌の肝転移に対しては、外科的切除が生命の予後を改善させることが明らかとなっています。抗癌剤治療に携わる腫瘍内科と連携を取りながら、手術の可能性を追及し、外科手術による根治を目指しています。
一方、胆管癌では肝門部領域胆管癌と肝内胆管癌があり、切除可能病変であれば、手術が最も治癒が期待できる治療方法です。胆管癌では決まった手術術式といったものがなく、がんの場所、広がりに応じた術式が選択されます。一般的には肝門部領域胆管がんの場合は肝切除、胆管切除を伴う術式が選択され、肝内胆管癌の場合は肝切除術が選択されます。


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ごあいさつ

2018年8月1日付けで、外科学講座肝臓外科担当診療教授を拝命致しました。私は、合併症を起こさない、安全かつ丁寧な手術を行うことをポリシーとし、年間170例以上の原発性肝細胞癌、転移性肝癌、胆管癌、巨大血管腫などの肝切除術を、指導医および執刀医として担当して参りました。今後もさらに「手術手技の的確さ」「手術進行の円滑さ」「術野の完成度」を追求し、多くの患者さんにご満足いただけるよう、より高度な治療のご提供を目指して精進していく所存です。また、これまで以上に周辺地域の病院、診療所とのネットワークを強固なものとし、地域医療の発展に寄与していきたいと考えております。常に患者さんにとって一番良い治療方針をご提案し、患者医師お互いが強い信頼関係で結ばれた心の通った医療、それこそを私の信念としております。

診療科長 診療教授 海堀 昌樹

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特色・方針

✔肝臓がん 腹腔鏡手術について
腹腔鏡下肝切除術は高難度であり、実施できる施設は限られますが、当院は施設基準を満たし認可を受けており、全ての高難度腹腔鏡下肝切除を保険適用で行うことが可能です。


現在は、当院で実施する肝切除の約8割を腹腔鏡手術で行っています。腹腔鏡手術は、開腹手術に比べ低侵襲で痛みが少ないことから、退院までの期間も約1週間と短いのが特徴です。また、当科では他の施設に先駆けて、ロボット支援下肝切除の導入も行っていく予定です。

 

✔胆道がん(肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、胆嚢がん)への取り組みについて
胆道がんは、切除が可能か不可能かの判断が難しい疾患です。当院では、内科、放射線科とチームを組み、精細な検査を実施し、患者さんの根治性、安全性を担保しつつ、ベストな治療方針をご提案致します。
当科では、発見された時点で進行していて手術不能と診断された胆道がんに対してGCS療法を中心とした薬物療法を実施しています。GCS療法は他の薬物治療に比べて治療効果が高く、約3割の患者さんで腫瘍が縮小し、根治手術(コンバージョン手術)を実施することができその約半数の患者さんが3年以上生存できました(左図)。



右図は初診時に切除不能と診断された胆管がん患者さんのERCP像です。当科でGCS療法を開始後5ヶ月で腫瘍が縮小し、手術を実施することができ、術後3年間無再発で生存されています。骨転移や肺転移のある場合でもGCS療法で遠隔転移が消失する場合があります。また、当科はFGFR阻害薬に関する臨床治験の登録拠点施設です。すでに切除不能と診断された患者さんや既存の化学療法で治療効果が得られない患者さんであっても、諦めず一度当科へご相談ください。

 ✔切除不能な進行肝細胞がんに対する治療について

当科では、切除不能な進行肝細胞がんに対して、数多くの薬物療法を経験しており、副作用を抑えつつ最大限の効果を引き出す工夫を実践することで、高い奏効率と病態制御率を実現しています。また、薬物療法を中心に肝動脈塞栓術、肝動注化学療法や手術を適切なタイミングで組み合わせた集学的治療により、良好な予後延長効果を得ています。近年、分子標的薬に免疫チェックポイント阻害薬を併用するテセントリク+アバスチン併用療法が導入され、非常に高い腫瘍縮小効果(奏効率:41%)を認めていることから、今後、腫瘍縮小することにより根治に至る患者さんの増加が見込まれています。

 


 ✔高齢者における肝切除について

わが国の超高齢社会の進行に伴い、高齢患者さんの手術機会が増えています。当院での肝細胞がん手術症例の年齢分布で、近年、80歳以上の方の手術が増えています。高齢者肝切除症例の術後短期および長期成績は、非高齢者と比べ遜色ありません。当院での最高齢は90歳代半ばの患者さんで腹腔鏡下肝切除を受けられ、術後約2週間で退院されました。当院では身体面だけでなく、認知機能障害やうつ症状の増悪を回避するための各種取り組みを行っており、医師、看護師、リハビリ技師など多職種で術前術後を全力でサポートしています。

 

 

 

 ✔肝嚢胞の手術について
肝嚢胞の多くは無症状ですが、大きくなれば腹部腫瘤の自覚、胃部の不快感、吐き気などの症状が現れることがあり、症状を認める場合に手術の適応となります。当院では年間10~20例の肝嚢胞症例に対する手術を行っています。多発する肝嚢胞では、手術対応困難とする施設も少なくありませんが、当院では症状に応じた原因嚢胞を詳細に検討し、オーダーメイドな手術加療を実施し、実績をあげています。

関連している診療支援部門

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実績

診療実績(2021年1月~2021年12月)対象疾患

総手術症例数 250例
肝細胞癌 96例
転移性肝癌 58例
肝内胆管癌 29例
肝門部領域癌 18例
肝のう胞 14例
胆のう癌 7例
脾臓疾患 8例
その他 20例

診療実績(2021年1月~2021年12月)手術術式

総手術症例数 250例
 開腹手術 48例
  肝門部領域癌根治手術  8例
(血行再建2例)
  開腹肝切除術
   二区域切除術 13例
(血行再建1例)
   一区域切除術 11例
   亜区域切除術 0例
   部分切除術 6例
  開腹脾臓摘出術 0例
  その他 10例
 腹腔鏡下手術 161例
  腹腔鏡下肝切除
   二区域切除術 17例
   一区域切除術 52例
   亜区域切除術 22例
   部分切除術 48例
  腹腔鏡下天蓋切除術(肝のう胞手術) 12例
  腹腔鏡下脾臓摘出術 8例
  その他 2例
 その他手術(CVポート造設ほか) 41例
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スタッフ

氏名 写真 職名 専門分野 認定資格
海堀 昌樹 海堀 昌樹 診療教授
肝胆膵外科
移植外科
外科学会専門医・指導医
消化器外科学会専門医・指導医
消化器がん外科治療認定医
肝胆膵外科学会高度技能指導医
肝臓学会専門医・指導医
外科感染症学会暫定教育医
ICD制度協議会Infection Control Doctor
TNT(Total nutritional therapy)認定医
身体障害者福祉法第15条指定医師
松井 康輔 松井 康輔 准教授
肝胆膵外科
移植外科
外科学会専門医・指導医
消化器外科学会専門医・指導医
がん治療認定医機構がん治療認定医
肝胆膵外科学会高度技能専門医
山本 栄和 山本 栄和 講師 肝胆膵外科
移植外科
外科学会専門医・指導医
移植認定医
小坂 久 小坂 久 講師
肝胆膵外科 移植外科
外科学会専門医
消化器外科学会専門医・指導医
消化器病学会専門医
がん治療認定医機構がん治療認定医
消化器がん外科治療認定医
医師会産業医
膵臓学会指導医
松島 英之 松島 英之 助教
肝胆膵外科
移植外科
日本外科学会専門医
消化器外科学会専門医
がん治療認定医機構がん治療認定医
消化器がん外科治療認定医
橋本 祐希 橋本 祐希 病院助教
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