✔肝臓がん 腹腔鏡手術について
腹腔鏡下肝切除術は高難度であり、実施できる施設は限られますが、当院は施設基準を満たし認可を受けており、全ての高難度腹腔鏡下肝切除を保険適用で行うことが可能です。

現在は、当院で実施する肝切除の約8割を腹腔鏡手術で行っています。腹腔鏡手術は、開腹手術に比べ低侵襲で痛みが少ないことから、退院までの期間も約1週間と短いのが特徴です。また、当科では他の施設に先駆けて、ロボット支援下肝切除の導入も行っていく予定です。

✔胆道がん(肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、胆嚢がん)への取り組みについて
胆道がんは、切除が可能か不可能かの判断が難しい疾患です。当院では、内科、放射線科とチームを組み、精細な検査を実施し、患者さんの根治性、安全性を担保しつつ、ベストな治療方針をご提案致します。
当科では、発見された時点で進行していて手術不能と診断された胆道がんに対してGCS療法を中心とした薬物療法を実施しています。GCS療法は他の薬物治療に比べて治療効果が高く、約3割の患者さんで腫瘍が縮小し、根治手術(コンバージョン手術)を実施することができその約半数の患者さんが3年以上生存できました(左図)。


右図は初診時に切除不能と診断された胆管がん患者さんのERCP像です。当科でGCS療法を開始後5ヶ月で腫瘍が縮小し、手術を実施することができ、術後3年間無再発で生存されています。骨転移や肺転移のある場合でもGCS療法で遠隔転移が消失する場合があります。また、当科はFGFR阻害薬に関する臨床治験の登録拠点施設です。すでに切除不能と診断された患者さんや既存の化学療法で治療効果が得られない患者さんであっても、諦めず一度当科へご相談ください。
✔切除不能な進行肝細胞がんに対する治療について

当科では、切除不能な進行肝細胞がんに対して、数多くの薬物療法を経験しており、副作用を抑えつつ最大限の効果を引き出す工夫を実践することで、高い奏効率と病態制御率を実現しています。また、薬物療法を中心に肝動脈塞栓術、肝動注化学療法や手術を適切なタイミングで組み合わせた集学的治療により、良好な予後延長効果を得ています。近年、分子標的薬に免疫チェックポイント阻害薬を併用するテセントリク+アバスチン併用療法が導入され、非常に高い腫瘍縮小効果(奏効率:41%)を認めていることから、今後、腫瘍縮小することにより根治に至る患者さんの増加が見込まれています。
✔高齢者における肝切除について
わが国の超高齢社会の進行に伴い、高齢患者さんの手術機会が増えています。当院での肝細胞がん手術症例の年齢分布で、近年、80歳以上の方の手術が増えています。高齢者肝切除症例の術後短期および長期成績は、非高齢者と比べ遜色ありません。当院での最高齢は90歳代半ばの患者さんで腹腔鏡下肝切除を受けられ、術後約2週間で退院されました。当院では身体面だけでなく、認知機能障害やうつ症状の増悪を回避するための各種取り組みを行っており、医師、看護師、リハビリ技師など多職種で術前術後を全力でサポートしています。
✔肝嚢胞の手術について
肝嚢胞の多くは無症状ですが、大きくなれば腹部腫瘤の自覚、胃部の不快感、吐き気などの症状が現れることがあり、症状を認める場合に手術の適応となります。当院では年間10~20例の肝嚢胞症例に対する手術を行っています。多発する肝嚢胞では、手術対応困難とする施設も少なくありませんが、当院では症状に応じた原因嚢胞を詳細に検討し、オーダーメイドな手術加療を実施し、実績をあげています。