病気の辞典 vol.014(2017/06/06)閉塞性動脈硬化症

血管外科
教授 駒井 宏好

閉塞性動脈硬化症



概要

心臓からからだ全体に血液を運ぶ動脈に動脈硬化が進むと壁が厚くなり内腔側にコレステロールや血栓が突出して狭窄や閉塞をきたします。これが閉塞性動脈硬化症といわれる足の血流が悪くなる病気の本態です。糖尿病、高血圧、高脂血症を合併する方、透析をされている方、たばこをのまれている方はこの動脈硬化の進行が非常に早くなります。



症状

閉塞性動脈硬化症の症状は4段階に起こってきます。
第一段階:足の冷感、しびれ
この症状だけでは閉塞性動脈硬化症とはいえず、また患者さんも病院にいくことはあまりありません。
第二段階:間歇性跛行(ある一定の距離を歩くといつも同じ距離で足がつっぱってくる、だるくなる)
第三段階:安静時痛(じっとしていても足が痛くなる)
第四段階:足の潰瘍、壊死(足がくさってくる)



検査

閉塞性動脈硬化症を診断するためには生理学的検査と画像検査があり、症状や経過も含め総合的に判断することが大切で、一つの検査だけで決まるものではありません。
①生理学的検査法
1.脈波検査(ABI)
両手両足の血圧を同時に測定するだけの簡単な検査法です。0.9以下が異常と判断します。
2.皮膚還流圧測定(SPP)
足のうら、甲の皮膚の血流を測定する検査でこれによって手術が必要かどうか、おおよそ決まります。
②画像検査
1.造影CT
2.MRI
3.エコー検査(超音波検査)
4.血管造影検査

一番確実に血管のつまりがわかります。特に膝より下の血管の評価には不可欠です。ただ侵襲的なためそれなりの危険性もあります。通常入院での検査になります。



閉塞性動脈硬化症の治療(保存的治療)

症状が軽度のかたは無理をして危険な手術をせず薬と運動で歩ける距離を伸ばします。むしろ同じ動脈硬化でおこる心筋梗塞や脳卒中を予防することが肝心です。



閉塞性動脈硬化症の治療(手術)

第三、四段階の方、つまり安静時にも疼痛があったり潰瘍、壊死ができている方は手術をしないと治りません。
手術には大きく分けて2種類があります。
1. バイパス術
狭窄や閉塞場所を飛び越えて血液を足の末梢に送れるように新たな道を作る方法です。手術がうまくいけば歩ける距離は飛躍的にのびますし、潰瘍や疼痛はかなり改善することが期待されます。壊死に陥っている足も切断範囲を最小限にすることができます。
2.カテーテル治療(血管内治療)
動脈のつまっているところや細くなっているところにカテーテルという細い管をとおして治してしまう方法です。バイパス手術と違い局所麻酔で皮膚のうえから血管を突き刺すだけでできてしまうので患者さんの負担は小さく入院期間も短くて済みます。



関西医科大学総合医療センターの治療方針

我々の治療方針は重症患者に対しては徹底的な血行再建で足を助け、命を助ける、そして痛みのない生活を送っていただくこと、また軽症患者には足にとらわれず寿命が少しでも延びるよう患者本位の全身治療を行うことです。関係各部署との連携や家庭医との連携、看護師や検査技師、事務員との連携も十分とって患者さんに対し最大限のサービスを提供しています。

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注:記載内容や医師情報は掲載時点のものです。 詳しくは担当診療科にご確認ください。


血管外科 教授駒井 宏好(こまい ひろよし)

駒井 宏好

専門分野:閉塞性動脈硬化症(下腿動脈バイパス)、フットケア

認定資格:外科認定医・専門医・指導医、心臓血管外科専門医・修練指導者、脈管専門医、下肢静脈瘤血管内焼灼術実施医、外国医師等が行う臨床修練に係る医師法に基づく臨床修練指導医

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