病気の辞典 vol.016(2017/07/03)糖尿病網膜症

眼科
助教 三輪 加耶子

糖尿病網膜症



概要

糖尿病網膜症は、糖尿病腎症・神経症とともに糖尿病の3大合併症のひとつで、我が国では成人の失明原因の第2位となっています。
網膜は眼底にある薄い神経の膜で、ものを見るために重要な役割をしています。カメラでいうとフィルムのはたらきをしています。
糖尿病網膜症とは、糖尿病が原因で目の中のその網膜にはりめぐらされている細かい血管(毛細血管)が壊れることで発症し、徐々に視力が低下する病気です。



原因

網膜の一部に弱い部分があると、そこに裂孔(裂けめ)を生じて、そこから眼球内の液が網膜の裏側に入り込み、網膜が剥がれます。裂孔は格子状変性という病巣に関連して自然に発生することがほとんどですが、殴られたり、ボールが目に当たったりした場合に、眼球が強く変形して裂孔ができ、網膜剥離になる場合もあります(外傷性網膜剥離)。

≪単純網膜症≫
初期の段階です。まだ自覚症状がみられません。しかし、眼底検査を行うと毛細血管瘤,網膜点状・ 斑状・線状出血,硬性白斑,網膜浮腫が認められ、少しずつ異常があらわれています。
≪前増殖網膜症≫
中期の段階です。血管が詰まって、網膜の一部に血液が流れていない虚血部分が生じてきた段階で、そのまま放置すれば次の増殖網膜症に進行します。視界がかすむなどの症状が感じられます。見えにくいと感じたときにはすでにこの段階の方がほとんどです。
≪増殖網膜症≫
末期の段階です。新生血管という悪い血管が多数みられます。新生血管はもろいために容易に出血を起こします。その出血により視力低下や飛蚊症が起こり、さらに増殖膜という膜を張りそれが原因で網膜剥離を起こしたり、新生血管を放置すると緑内障を発症し失明に至ることもあります。

 



症状

視力低下、飛蚊症、変視症(物が歪んで見える)など



検査

細隙灯検査、眼底検査、蛍光眼底造影検査、OCT検査 などステージに応じて行う必要があります。



治療

レーザー光凝固術、抗VEGF薬硝子体内注射、硝子体手術などステージに応じて行います。



総合医療センターで行う治療

当院では、初期~中期の段階に来られた方にはまず検査を行い必要であればレーザー光凝固術を行います。
中期以降で黄斑部に病変が及び視力が低下している方にはレーザー光凝固に加え、アイリーア®、ルセンティス®などの抗VEGF薬を硝子体内投与します。
また患者さんと相談しながら従来の治療ケナコルト®(ステロイド)のテノン嚢下注射も行っています。
複数回行っても改善が見られない場合もしくは、再発を繰り返すような場合は硝子体手術を行っております。
当院網膜硝子体センターでは経験豊富な硝子体術者が複数在籍しているため最新機器による最少切開硝子体手術に対応しており術後の治癒率は高く安心して手術を受けていただけます。

ページの先頭へ

注:記載内容や医師情報は掲載時点のものです。 詳しくは担当診療科にご確認ください。


眼科 助教三輪 加耶子(みわ かやこ)

専門分野:白内障、網膜硝子体、糖尿病網膜症、緑内障

認定資格:眼科専門医、PDT認定医

眼科の詳細ページを見る