白血球の中で免疫を担う細胞がリンパ球ですが、その最も成熟した形質細胞でのがん化です。形質細胞は感染防御に重要な抗体を産生していますが、その産生が障害されるため感染をはじめ、異常タンパクに起因する臓器障害がみられます。また、骨との親和性が高いため、骨破壊も特徴です。
血液腫瘍内科
教授 石井 一慶
白血球の中で免疫を担う細胞がリンパ球ですが、その最も成熟した形質細胞でのがん化です。形質細胞は感染防御に重要な抗体を産生していますが、その産生が障害されるため感染をはじめ、異常タンパクに起因する臓器障害がみられます。また、骨との親和性が高いため、骨破壊も特徴です。
・腰痛などの骨痛
・感染症
骨痛は白血病と異なり、骨髄腫による骨破壊のためにみられます。
1. 血液検査
・高カルシウム血症
・腎障害
・貧血
・総蛋白高値
・アルブミン/グロブリン(A/G)比の低値
総蛋白が異常高値を呈するときは多発性骨髄腫を疑う必要があります。免疫グロブリン検査では異常免疫グロブリンが高値を示し、そのほかの正常グロブリンは抑制されるために低値を示します。
2. 画像検査・単純骨X線
・MRI
・PET-CT
初診時に頭蓋骨、上下肢、脊椎の単純X線にて骨溶解病変をスクリーニングします。また、骨痛などの症状があれば、その部位のMRIも必要です。PET-CTは偽陰性を示すことが多く、スクリーニングとしては不適です。
3. 骨髄検査
確定診断するためには、白血病と同じく骨髄検査が必要です。
異常な形質細胞を10%以上認め、Mタンパクが検出され、臓器障害(高カルシウム血症、腎障害、貧血、骨病変など)があれば、多発性骨髄腫と診断されます。
2000年代に入り、プロテアゾーム阻害剤(ボルテゾミブ)、免疫調節剤(サリドマイド、レブラミド)の新規薬剤が登場し、治療成績は大きく改善しました。通常、65歳以下で重篤な臓器障害がなければ、大量抗癌剤(メルファラン)を用いた自家移植を施行します。自家移植とは、併用する大量抗癌剤後の強い骨髄抑制を速やかに回復させるために、自己の造血幹細胞を移植する治療法です。非常に有効率の高いVRD(ボルテゾミブ、レブラミド、デキサメサゾン)療法で導入した18か月の全生存率は自家移植の有無にかかわらず、97%と良好です。
新規薬剤であるボルテゾミブ、あるいはレブラミドを中心とした抗癌剤治療を施行しています。新規薬剤が登場してからも自家移植は治療成績の改善に重要です。当院でも積極的に導入しています。
注:記載内容や医師情報は掲載時点のものです。 詳しくは担当診療科にご確認ください。