胸腺は縦隔にある免疫に関係した臓器です。胸腺は子供から大人に成長するにつれてその役割を終え退化しますが、その胸腺から腫瘍が発生することがあります。胸腺に発生する腫瘍のうち最も頻度の多いものが胸腺腫です。
呼吸器外科
教授 金田 浩由紀
胸腺は縦隔にある免疫に関係した臓器です。胸腺は子供から大人に成長するにつれてその役割を終え退化しますが、その胸腺から腫瘍が発生することがあります。胸腺に発生する腫瘍のうち最も頻度の多いものが胸腺腫です。
胸腺腫は、胸部レントゲンや胸部CTの異常などをきっかけに、症状がない状態で発見されることがほとんどです。稀に、かなり進行して心臓などの周囲臓器を圧迫し、胸部違和感などの症状が出現することがあります。腫瘍の発育スピードはゆっくりしていることが多く、治療後に再発する場合でもかなりの年月を経てから再発することがあります。
また約10~30%の頻度で重症筋無力症などの自己免疫疾患を合併することがあります。その場合、夕方になると全身の力が入りにくい、食べ物を飲み込みにくい、まぶたが落ちるなどの症状があります。
画像検査(胸部CTなど)から診断します。手術前に病理検査を行うこともありますが、ほとんどの場合は手術による摘出にて最終的な病理診断を行います。
手術、放射線療法、化学療法、など
正岡病期分類に沿って治療方針を考えます。
画像から胸腺腫と考えられ、手術にて摘除可能な場合(正岡病期I期、II期、一部のIII期)には根治を目指して手術を勧めます。胸腺腫の患者さんのほとんどに手術を行います。手術では、腫瘍の大きさ、局在により胸骨正中切開術、開胸術、胸腔鏡下手術を行います。胸腺腫摘除か、胸腺合併切除、拡大胸腺切除、周囲臓器合併切除かを検討します。手術後に腫瘍の残存がある場合、または疑われる場合には放射線治療の追加を考慮します。周辺への影響のある腫瘍では術前導入治療(ステロイドパルスや化学療法)を考慮します。
手術にてすべての腫瘍の摘除が不可能な場合には、適切な治療方針は定かではありません。目指す治療目標を相談し、集学的治療(手術、放射線治療、化学療法、など)を行います。腫瘍増大が緩除な場合、状況によっては経過観察を行うこともあります。
当院の得意とする手術は剣状突起下アプローチ気縦隔併用単孔式胸腔鏡手術です。比較的小さな前縦隔腫瘍を対象に、上腹部に3cmほどの皮膚切開だけで胸腔鏡手術を行います。これが適応にならない場合には3ポート胸腔鏡手術を行います。これは3つの穴から手術を行います。
大きな腫瘍の場合には胸骨正中切開手術を行います。
注:記載内容や医師情報は掲載時点のものです。 詳しくは担当診療科にご確認ください。