近年、医学の進歩による高度医療や、薬剤耐性菌(MRSAや多剤耐性緑膿菌など)の増加、高齢化社会に伴う合併症をもつ患者の増加など、院内感染のリスクは高まっています。
医療施設においては院内感染に留意し、院内感染発生の際には速やかに原因の特定・制圧・終息を図ることが重要です。院内感染のリスクを低減し、安心・安全な医療を提供することを目標に日々活動しています。
令和3年4月1日付けで感染制御部部長を拝命しました、三島伸介と申します。
私は本学卒業後、附属病院胸部外科学講座に入局し、主任教授であった今村洋二先生に許可を頂き手術研修目的で北京に渡りました。その滞在中の平成14〜15年に重症急性呼吸器症候群(SARS)の世界的流行に遭遇し、世界保健機関(WHO)と中国衛生部との合同調査隊に参加して、山西省の流行状況について臨床感染制御の観点から調査をさせて頂きました。
WHOの天然痘撲滅チームで活動歴のある方がその調査隊におられ、そういう方々と接して調査をすることで渡航医学や感染制御に興味を惹かれたことを覚えています。私にとって感染対策に携わるきっかけであり、医師としての大きな分岐点であったと思います。
SARS患者に対応した麻酔科医へのインタビュー(中国・山西省)
感染症は様々な細菌、ウイルス、真菌、寄生虫などが病因となって人に引き起こされる疾病状態です。細菌やウイルスなどがヒトにもたらす影響は決して負の側面のみではないと思われますが、場合によっては何らかの健康障害をもたらすこともまた事実です。また、2019年後半からの新型コロナウイルス感染症の流行を見ればわかりますが、病原体は国境など関係なく、人の移動とともに全世界を移動します。感染症は個人が疾病を発症することだけにとどまらず、その個人が居住する社会にも広く影響を与えるものです。感染症を予防すると言うことは、個人を守ることと同時に、社会を守ることをも意味します。したがいまして、感染に関する基本的な知識については、医療に携わる者だけではなく、社会を構成する全ての人が一定程度の認識を持って社会を守ることが重要だと考えています。
医療機関における感染対策はあらゆる職種の方が知識を共有すべき分野であり、あらゆる職種のスタッフにはその感染対策の重要性を意識した行動が必要と考えます。わが国の感染制御学の黎明期にいち早く発足した当院の感染対策部門で働ける喜びを持って、院内のみならず、地域社会、国内、国外にも目を向けつつ、日々の感染対策に精進して参りたいと思います。
部長 講師 三島 伸介
当院の病院感染への実効的な対策は、昭和61年(1986年)の感染対策室設置に端を発します。1970年代後半頃より欧米で増加して医療問題となっていた薬剤耐性菌の一つであるメチシリン耐性ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus : MRSA)は、1980年代になって日本国内でも増加していく状況の中、わが国初の感染対策に関する学会となる日本環境感染学会が発足した年とまさに同じ年に当たります。一般の方々においてはなおのこと、医療従事者においてすら「院内感染」という言葉が十分に認知されていなかった時代背景のもとで発足しました。
当院感染制御部は感染症専門医、感染管理認定看護師、感染制御認定薬剤師、抗菌化学療法認定薬剤師、感染制御認定臨床微生物検査技師などの専門資格を有するスタッフで構成されています。多職種合同による感染対策チームとして、感染対策チーム(ICT)と抗菌薬適正使用支援チーム(AST)が編成され、日々の感染対策に当たっています。ICTでは院内ラウンドを定期的に行って院内各部署における感染対策の実施状況や耐性菌検出状況を確認して、院内で広く情報の共有を図って院内感染対策を行っています。ASTでは各種感染症に対する抗菌薬の使用状況について、培養結果にもとづき適切な抗菌薬の選択・使用について検討し、適宜担当医へフィードバックしています。つねに双方向性のコミュニケーションを図るようにしています。感染症は地球を一つの大きな地域として捉える視点が重要ですので、国内の情報にとどまらず、国外の情勢についても留意して感染予防に努めています。
『咳エチケット』 咳やくしゃみ、発熱のある方は、マスクの着用をお願いします。くしゃみや咳をする時は、ティシュペーパーやタオル、ハンカチ等で口・鼻を覆いましょう。ふき取った後は手を洗いましょう。
『手洗い』 石けんによる手洗いまたは、アルコール性手指消毒剤をお願いします。
院内感染防止のため、必要な感染対策をお願いする場合があります。
『咳エチケット』
咳やくしゃみ、発熱のある方は、マスクの着用をお願いします。くしゃみや咳をする時は、ティシュペーパーやタオル、ハンカチ等で口・鼻を覆いましょう。ふき取った後は手を洗いましょう。
『手洗い』
石けんによる手洗いまたは、アルコール性手指消毒剤をお願いします。