呼吸器外科では、入院では主として胸部疾患の手術や侵襲的治療、また肺癌などの周術期補助治療を行います。外来では主として胸部疾患の外科的治療を中心とした治療方針の決定、周術期の管理、術後サーベイランスを行います。
主な対象疾患:肺癌、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍(胸腺腫、胸腺癌、胚細胞性腫瘍、他)、気胸(原発性、続発性、他)、胸壁腫瘍、悪性胸膜中皮腫、胸部外傷
【当科のWebサイト】
胸部異常影/胸部痛/呼吸苦/咳/痰
患者さんにおかれましては、直接的には内科などに受診されると思いますが、担当医などの指示のもとで当科をご受診下さい。
当呼吸器外科では、肺、縦隔、胸壁の病気に対して診療を行い、主として手術による治療を行います。当院での手術の特徴は、低侵襲治療にあります。手術アプローチでは、ほとんどの症例で胸腔鏡手術を行います。胸腔鏡手術では、1つの創(3~4cm)、または少数個の孔(ポート)から内視鏡器具を挿入して手術を行っています。手術後の管理についても、胸腔ドレーンの留置方法や、分節麻酔など、痛みの少ない工夫を行っています。
肺の切除範囲について、悪性腫瘍では治癒を目指した根治性を確保しながら、生活の質の維持を目指した生体機能の温存を行うため、区域切除や気管支形成手術を積極的に行っています。多くの症例で術後4時間の時点で集中治療室において飲水や歩行を行っていて、早期の離床により合併症を避ける取り組みをしています。
治療選択や治療計画の相談を十分に行い、術前からの周術期呼吸支援外来や各種支援プログラム、術後の補助治療の相談と実施に至るまで、最新のエビデンスに基づいた一連の治療として実施しています。
以下が、当科が掲げるポリシーです。
■何より、治療の適応を考えます。
手術を行うには、疾患とその状態、腫瘍であれば腫瘍学的適応(腫瘍の分類、病期など)に加え、生理学的適応(手術に耐えられる体力があるかどうか)、患者さんの意向、患者さんの社会的状況、などを考慮して総合的に決めていきます。診療ガイドラインなどにおける標準的治療を念頭において相談しますが、これに限ることなく、個別的な状況により個別的な価値を付けることを厭いません。
■低侵襲な手術・治療を行います。
治療の目的が同じであるなら、それが達成できる方法からできるだけ低侵襲な治療を行います。手術ではほとんどの症例で胸腔鏡手術を行い、可能であれば単孔式胸腔鏡手術を行います。適応があれば生体機能温存手術や合併症を予防する手術を行います。高齢の患者さんに依っては入院自体の侵襲性を考慮して治療を相談していきます。
■根治を目指して他科連携、多職種連携を行います。
多くの場合には治療の妥当性と安全性を優先して考えますが、一部の患者さんに依っては根治を目指した拡大手術やそれに伴う麻酔科、集中治療室、緩和ケアチーム、精神科リエゾンチームとの連携、また集学的治療を行うための呼吸器内科や放射線科などとの連携を行います。併存疾患の周術期管理や、同時に見つかる複数疾患の治療の優先性や同時手術について他診療科と相談し、連携を行っていきます。
診療部長 教授 金田 浩由紀
■単孔式胸腔鏡手術
現在、膿胸を除くほとんどの胸腔鏡手術を単孔式で行っています。皮膚切開は3~4cmの1か所のみで、ここから5mm、30度の斜視鏡や鉗子を用いて解剖学的肺切除までの手術を行います。手術の低侵襲性によって術後の回復が早く、現在は術後4~5日での退院が標準的な経過となっています。
■術後合併症を予防する様々な手術手技の開発
単孔式胸腔鏡手術でも実施できる、術後合併症予防のための様々な手術手技を開発してきました。術後脳梗塞を予防するための左上肺静脈心膜翻転部剥離・結紮法、気管支断端廔を予防するための有茎肋間筋弁パラシュート縫合法や遊離脂肪織パラシュート縫合法、膿胸を予防するための皮下トンネル縫合法、などを開発し、有効性を検証し、臨床で成果を上げています。
■3D画像シミュレーション、ICG蛍光ナビゲーションを用いた肺区域切除
3次元画像解析ソフトを用いた3D画像シミュレーションや、インドシアニングリーン(ICG)を静脈投与して励起された蛍光を専用のカメラで観察することによる血流の判定を行う手術ナビゲーションを行っています。これらの技術は特に肺区域切除での区域間の判定や肺葉切除での分葉不全の葉間の判定に有効です。最新機器を導入し、細径胸腔鏡でもICGの観察が可能であり、低侵襲アプローチによる低侵襲肺切除を実施しています。
■O-arm術中イメージング
画像上すりガラスを呈する早い段階の肺腺癌では、浸潤性の乏しさから手術中にその位置を特定することが困難なことがあります。従来では手術直前にCTガイド下マーキングを行っていましたが、最近ではO-arm術中イメージングを導入し、これにより非浸潤性の肺癌の位置をリアルタイムに特定することが出来るようになり、正確な肺切除を行っています。
■剣状突起下アプローチ気縦隔併用胸腔鏡手術
4cmまでの縦隔腫瘍、巨大胸腺嚢胞、重症筋無力症に対してこの術式を行っています。剣状突起の尾側に3cmの皮膚切開を置き、前縦隔をCO2送気により手術スペースを確保して腫瘍摘除を行います。縦隔腫瘍では剣状突起下の単孔式で行いますが、重症筋無力症では、左側方に5mmのポートを追加して行います。術後の痛みはかなり少ない方法です。
■COVID-19に続発、併存した呼吸器疾患の治療
重症のCOVID-19を多く診療している当院では、それに続発するニューマトセルや気胸、併存する気道内異物に対する治療を多く担当しました。手術時期の検討や適切な防護具の装着などを行い、気管支鏡下EWS充填術、単孔式胸腔鏡手術、硬性気管支鏡などを行っています。
■治療の適応の相談
手術を行うには、疾患とその状態、腫瘍であれば腫瘍学的適応(腫瘍の分類、病期など)に加え、生理学的適応(手術に耐えられる体力があるかどうか)、患者さんの意向、患者さんの社会的状況などを考慮して総合的に決めていきます。診療ガイドラインなどにおける標準的治療を念頭において相談しますが、これに限ることなく、個別的な状況により個別的な価値を付けることを厭いません。
氏名 | 写真 | 職名 | 専門分野 | 認定資格 |
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金田 浩由紀 | ![]() |
教授 | 呼吸器外科全般 | 日本外科学会認定医、外科専門医、外科指導医、呼吸器外科専門医、気管支鏡専門医、気管支鏡指導医、がん治療認定医 |
中野 隆仁 | ![]() |
講師 | 呼吸器外科全般 | 外科専門医、呼吸器外科専門医、気管支鏡専門医 |