日本は今や高齢化社会であり、国民の2人に1人はがんにかかる時代となっています。がんに対する医療も目覚ましく発展しています。抗癌剤を含めた新規薬剤の登場、ならびに細胞治療、放射線治療、内視鏡的治療、外科的手術などの成績も向上しています。各診療科の専門分野が深くになるにつれて、1人の患者様をあらゆる面から包括的に支えることも重要となります。がん治療・緩和センターがその役割を果たしたいと思います。
わが国ではがんは死因の第1位であり、がんの撲滅は国を挙げて最も重要な対策の一つです。厚生労働省はそのシステム構築のためにがん診療拠点病院を定めています。2015年4月1日に関西医大総合医療センターが大阪府のがん診療拠点病院に指定されました。それを受けて、がん治療・緩和センターが設置されました。当院は大学附属病院であることから各診療科に専門医を多数擁し、がん治療も含めた高度先進医療を積極的に行っています。これら、各科の診療をがん治療に特化して有機的に統合し、医師のみならず、関西医大総合医療センター全体でがん治療・緩和医療をサポートするチームアプローチを強固にします。関西医大総合医療センターは80年以上にわたり地域医療に貢献してきました。その英知を集結してスタッフ一丸となり、がんを患われた患者様、ご家族様の一助になれるよう精進致します。
センター長 教授 石井 一慶
現在ございません。
方針としては院内での緩和医療も含めたがん診療のレベルアップならびに連携強化を目指します。緩和医療に関しては当センター開設前からすでに緩和ケアチームが積極的に活動しています。がん診療において、患者様のみならず、ご家族様も含めた様々な不安、苦痛を和らげることができるよう医師、看護師、ソーシャルワーカーなどの多職種チームで対応しています。がん診療に関しては、キャンサーボードを定期開催しています。キャンサーボードとは担がん患者様の医療を多分野の医療スタッフで検討するカンファレンスです。担当科のみならず、緩和医療チーム、放射線科、病理診断科、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、栄養士、理学療法士などで多方面から患者様の支援を含めたより良い医療を検討します。その検討は患者様に還元されるのみならず、我々医療人のレベルアップにも繋がります。さらに、次世代を担う研修医、ならびに専修医への啓蒙にもなります。
がん治療が進歩するにつれ、昨今は情報が氾濫しています。インターネットで容易に情報を得ることが可能となっていますが、その真偽は全く別です。さらに、各患者様によってどの情報が最も適切であるかを見つけることはなかなか困難です。患者様に応じた情報提供をできるよう当センターがお手伝いします。同じ疾患で悩んでおられる患者様を支援できるよう患者会の設立も様々な疾患ごとに設立していきたいと考えています。また、一般の方も対象にしたがんに関する教育も行えるよう準備していきます。
がん患者様の医療を様々な面から検討するキャンサーボードを院内で定期開催していますが、地域を支えておられる先生方にも参加していただける検討会も予定したいと思います。大阪府は、がん患者様を、がん診療の拠点病院と地域の先生方とで、連携しながら共同で診療できるよう統一の“がん診療地域連携クリティカルパス”を作成しています。5大がん(肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、肝がん)に前立腺がん、そしてがん疼痛緩和を加えた7つのパスを作成し、国指定のがん拠点病院を中心に各二次医療圏において運用されています。今後は、北河内医療圏でも当院と地域の先生方との間でがん診療ネットワークを構築し、そのパスを運用してがん診療の向上に努めていきたいと考えています。