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研究紹介(作業療法学科_こども発達科学分野)
子ども一人ひとりに向き合い、個々の可能性を最大限に引き出す
松島 佳苗 准教授
専門領域:子ども・特別支援教育
研究分野:ライフサイエンス 、リハビリテーション科学

研究から見える未来
感覚や運動の課題を抱える子どもたちに寄り添い、誰が見ても理解しやすい評価方法の確立を目指しています。新技術を活用し、作業療法の効果を高めることで、子どもたち一人ひとりの可能性を最大化する未来を描いていきましょう。
目指す未来
作業療法士、医療・福祉・教育・行政機関、福祉機器・文房・玩具開発
先生にインタビュー
Q1.先生の専門領域について教えてください
「子どもの作業療法」が専門です。現在、神経発達症(自閉スペクトラム症)の子どもたちを対象に、より良い支援を目指してさまざまな研究に取り組んでいます。自閉スペクトラム症は、社会生活で多くの困難を示しますが、原因もまだ解明されていない疾患です。本人たちはとても困っているにもかかわらず、周囲からは理解されにくいという側面もあります。個別性の高い支援を提供する、オリジナリティの高い専門領域だと思います。
Q2.現在どのような研究をされていますか?
子どもたちの「感覚」と「協調運動」に関して研究しています。神経発達症児の中には特定の音に敏感過ぎたり、鈍かったり、箸の使い方や運動が不器用な子もいて、症状も一人ひとり異なります。それぞれの症状を客観的に把握できる検査機器などの開発や、脳科学や心理学の研究者と連携して子どもの行動背景にある神経基盤を解明する研究にも取り組んでいます。
Q3.その研究をする目的や今後について教えてください
目的は、子どもたちが抱える感覚や運動の問題を深く理解し、作業療法の効果をもっと高めることです。例えばがんなどは、細胞や組織の検査所見から診断して治療につなげることができますが、神経発達症は作業療法の必要性を判断し、その効果を客観的に示すための「ものさし」がまだ多くはありません。今後は、情報工学分野の研究者とも連携してAIなどの新しい技術を活用した評価方法を開発し、作業療法の効果をしっかり証明できる研究を進めたいと考えています。
Q4.先生から見た作業療法士の魅力について教えてください
作業療法士は、機械にはできない、個に向き合うとても奥深い職業です。病気や障がいがあっても、子どもたちは未来に向かって成長する無限の可能性を秘めています。その可能性を最大限に引き出し、自分らしい生き方をサポートできるのが、この仕事の最大の魅力だと考えています。人の役に立ちたい、誰かの夢を応援したい、そんな気持ちがある人にぴったりの仕事です。
【研究TOPCS】効果的な支援のための小児リハビリテーション研究
模倣動作時の視線計測
模倣の難しさは社会性の問題と関係があることが知られています。この研究では、検査者を見て子どもが同じポーズをとる課題を行い、子どもがどのようなところに注目しているかを視線計測機器を仕様して調査。子どもの注目の仕方が分かれば、有効的な支援方法の解明につながると考えています。

(左)自閉スペクトラム症の子ども/(右)自閉スペクトラム症ではない子ども(写真は一例であり、今後さらに研究が必要)
柔軟センサーを用いた運動制御の調査
通常、私たちは柔らかい物でも形を崩すことなく力を調整して、つまんだり移動できたりします。筋肉がどれぐらい収縮するかを脳が予測したり、実際に感じ取ったりして力加減を調節しているからですが、障がいのある子どもの中には、その処理がうまくいっていない子もいます。この研究では、柔らかい樹脂の中に埋め込んだセンサーを用いて、対象物の柔らかさに合わせて力加減を調整する能力を調べています。

センサー部分を移動させたとき、強く握ると大きい波形、優しく握っていると小さい波形が出て、一定なら波形が平らになります。
卒業生のホンネVoice

作業療法学科 卒業生(2025年卒業)
「研究方法論」という講義で研究の進め方は学べても、データ収集や統計など実際に経験しないと分からないことも多く、もっと深く学びたくて松島ゼミに入りました。注意障害について研究したかったのですが、大規模になり過ぎるということで、興味ある分野を先生と一緒に練り直し、学生でも実現可能なテーマを見つけることができました。卒業研究としてまとめる時期が、実習や国家試験の勉強と重なって弱気になることもありましたが、先生方が研究で使用する機器を実際に使わせてもらうなど、貴重な経験もたくさんできました。臨床現場に立つ今も、進化し続ける医療・リハビリテーションに役立つ研究をしていきたいと考えています。
先生からのメッセージ

作業療法士は、人の可能性を追求できる、応用性の高い職業です。完治が難しい障がいがあっても、子どもたちはその子らしい生き方を追求できます。目の前の人にとって何が最善かを考え、支援を提供し、将来は専門性を生かした研究にも取り組みたいという方は、ぜひ本学の作業療法学科で一緒に学びましょう。卒業後は本学大学院で、自身の専門性をさらに追求する道も開かれています。