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研究紹介(作業療法学科_脳機能分野)
最新テクノロジーと脳科学が拓く次世代リハビリテーションの可能性
橋本 晋吾 講師
専門領域:脳機能(認知症、高次脳、MRなど)
研究分野:ライフサイエンス、神経心理学、認知症、リハビリテーション科学、高次脳機能障害

研究から見える未来
認知症や高次脳機能障害など「目に見えない障害」で困っている人たちを支援するテクノロジーやトレーニングの開発を目指しています。作業療法は新しいテクノロジーと親和性が高いため、今後ますます変化・発展していく分野だと思います。
目指す未来
作業療法士、医療・福祉・教育・自治体、福祉機器・アプリ開発、起業
先生にインタビュー
Q1.先生の専門領域「脳機能分野」について教えてください
脳には860億個もの神経細胞があります。数万もの他の細胞と複雑に繋がって思考や身体動作を司り、万が一、病気やケガで損傷しても回復可能な自己再編能力を持っています。リハビリテーションの本質は単なる筋トレではなく、適切な刺激を通じて神経ネットワークの再配線を促し、失われた動作を科学的に取り戻すことにあります。脳の柔軟な性質を最大限に活用し、自分らしい生活の再建を目指す。それが現代の脳機能リハビリテーションです。
Q2.先生が取り組まれている研究について教えてください
認知症予防や事故などでダメージを負った脳の回復を助けるため、MR(Mixed Reality:複合現実)を用いた新しいリハビリプログラムの開発・研究を行っています。脳は使わないと機能が低下します。ゲーム感覚で課題に取り組んでもらうことで、リハビリテーションを楽しく継続できるだけでなく、より脳機能が活性化することが分かっています。知的な活動がうまくできなくなる「高次脳機能障害」のリハビリテーションでも、従来とは異なった効果が得られています。
Q3.研究に取り組まれたきっかけを教えてください
認知症や高次脳機能障害は、見た目では分かりにくいため「目に見えない障害」と呼ばれます。身体障害に比べてこれらが軽視され、適切なリハビリを受けられない現状を目の当たりにし、「なぜ以前のようにできないのか」と一人で苦しむ患者さんの力になりたい。そう感じたのが研究の原点です。体だけでなく心や頭も支える作業療法士は、生活の困難に寄り添い、大きな役割を果たすことができる支援職です。
Q4.研究の目的や今後の展望はありますか?
MRを用いたトレーニングが、認知症や高次脳機能障害のリハビリテーションにどのように役立つかを明らかにすることが目標です。現在はまだ、指標を収集・解析している段階ですが、対象者にとって最適なトレーニングが提供できるリハビリテーションシステムを構築したいと考えています。さらに今後は、複数人で交流できるトレーニングプログラムなどの開発研究も進めていきます。
【研究TOPICS】脳科学を活用した効果的・効率的なリハビリトレーニングの研究
Brain Machine Interfaceを使ったトレーニング
脳卒中などにより手足が動かしにくくなった患者さんに対する新しいトレーニングとして、脳波を使ったロボットリハビリテーション(Brain Machine Interface)が注目されています。従来のリハビリテーションとの比較や、脳波のフィードバックが患者さんの高次脳機能に与える影響について検証を行っています。

脳卒中で手足が動かしにくい患者さんのリハビリ風景。ロボット機器を麻痺のある右腕と頭に装着。手のひらが広がるように強く念じることで、脳波がロボットに伝わり、ロボットが動いて手のひらが開くという仕組みです。

神経細胞や筋肉は正常でも両者をつなぐ神経線維に損傷があるとネットワークが遮断され、手足を動かせなくなります。長くその状態が続きどう動かしていいかわからなくなった脳に、ロボットが補佐して刺激を与えることで、ネットワークが再構築されることが期待できます。トレーニング後、脳波がしっかり活性しているのが分かります。
Mixed Realityを使ったトレーニング
本学研究チームと企業が共同で開発したリハビリテーションシステム(特許取得済)で、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)という機器を用い、認知症や運動機能の低下が疑われる患者さんのトレーニング効果について研究しています。従来の紙や鉛筆を用いたトレーニングよりも高い効果が得られ、身体がすくんでしまうパーキンソン病の症状にも有効であることがわかってきました。高齢者の認知機能が低下する原因の一つには社会性の低下があります。今後は、遠隔リハビリテーションで複数人が同時に対戦できる、メタバース的な展開も進めていきます。

患者さんが装着するHMDには、現実世界にボールや花などの仮想物体が投影されます。飛んでくるボールを打ち返す課題など、ゲーム感覚で楽しみながらトレーニングします。
在学生のホンネVoice

作業療法学科 在校生(2023年入学)
橋本先生のゼミに入ったのは、講義を通じて高次脳機能障害に興味を持ったことがきっかけです。先生の研究について大変そうなイメージを抱いていたので「自分にできるのか」という不安もありましたが、先生の強力なサポートで安心して進められました。研究テーマは、もともと興味のあった「アロマ」が高次脳機能の一つである「注意機能」に与える影響についてです。調査のため検査音声を自作し、アロマ吸入前後の血圧や唾液アミラーゼの測定を行いました。悩んだり、困ったりしたこともありましたが、初めての人と話すこともでき楽しい経験でした。皆さんも作業療法学科で、自分の「興味」を形にする楽しさを一緒に体験しませんか。
先生からのメッセージ

作作業療法士は、カラダ・ココロ・アタマのリハビリテーションを担う医療専門職です。医学的な知識をベースに、その人らしい人生を再建するための方法を考えます。「人の役に立ちたい」という想いに、科学の力を掛け合わせたリハビリテーションを行う作業療法士は、より良い暮らしを形にするクリエイティブな職業です。ぜひ本学の作業療法学科で学び、あなたの個性を活かしましょう。
