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スポーツ科学分野
研究と実践で未来を拓く
研究概要
関西医科大学リハビリテーション学部スポーツ科学分野では、スポーツパフォーマンスの向上と障害予防に貢献するため、多角的なアプローチで研究活動に取り組んでいます。
私たちの研究は、大きく分けて二つの柱があります。一つは、大学内の専門的な機器を用いて詳細なデータを測定するLab studyです。ここでは、高精度な分析を通じて、人間の動きのメカニズムや身体能力の限界を探求します。もう一つは、実際のスポーツ現場に出向き、選手や指導者と共にデータを収集するField studyです。競技特性や環境要因を考慮した実践的な研究を通じて、現場が抱える課題の解決を目指します。
研究成果は、論文発表に留まらず、積極的にスポーツ現場に還元することを重視しています。得られた知見を選手や指導者に直接フィードバックすることで、彼らのパフォーマンス向上や怪我の予防に繋がる具体的なアドバイスを提供しています。机上の空論ではなく、現場のニーズに応える実践的な活動こそが、私たちのスポーツ科学分野の大きな特徴です。
「研究室から現場へ、そして現場から研究室へ」。この循環を大切にしながら、スポーツの最前線で活躍できる人材の育成と、スポーツ界全体の発展に貢献していきます。
高校生の皆さんへ:スポーツの科学に興味があり、将来、選手をサポートしたり、スポーツの発展に貢献したいと考えている方は、ぜひ私たちの研究室で学び、実践力を身につけませんか。
社会人の皆さんへ:現在、スポーツ現場で活動されている方、あるいはさらなる専門性を高めたいとお考えの方へ。私たちの大学院修士課程では、実践と研究を結びつけ、あなたのキャリアアップを力強く支援します。現場での豊富な経験を、科学的知見と融合させ、新たな価値を創造しましょう。
身体の中を侵襲なく診ることができる超音波装置(エコー)を使用して、高校サッカー選手の下肢筋の形態や構造を調べることによって、サッカー競技に特異的な骨格筋適応を明らかにするとともに、選手のパフォーマンス向上に貢献できるような研究・活動を行っています。


【前十字靭帯再建術後アスリートにおける動作特性の解析と再発予防戦略の構築】
私たちは、前十字靭帯再建術を受けたアスリートが安全に競技復帰し、再受傷を防ぐための研究に取り組んでいます。
具体的には、競技動作中の身体の動きを詳細に解析し、術後の身体能力の変化や、再受傷のリスクを高める可能性のある動作特性を明らかにします。得られた知見に基づいて、個々のアスリートに合わせた効果的なトレーニングプログラムや、競技復帰に向けた実践的な再発予防戦略を構築しています。
この研究を通じて、アスリートが安心して競技に打ち込めるよう、科学的根拠に基づいたサポートを提供し、パフォーマンスの向上と長期的な競技生活を支えることを目指しています。


【長距離選手のランニングエコノミーに関する調査】
大学女子長距離選手のランニングエコノミーなどを調査し、トレーニングやフォームチェックなどを行っています。
ランニングエコノミー:効率的な走りの鍵
ランニングエコノミーとは、同じ速度で走る際に消費される酸素量、つまりどれだけ効率よく走れているかを示す指標です。マラソンや駅伝といった長距離種目において、ランニングエコノミーが高い選手は、より少ないエネルギーで長時間走り続けることができるため、競技力向上に不可欠な要素となります。私たちは、選手一人ひとりのランニング中の酸素摂取量や心拍数などを詳細に測定し、現在のランニングエコノミーを正確に評価しています。


【体幹筋機能の簡易的な測定方法の開発】
当研究では、体幹筋機能を誰もが手軽に評価できるよう、スマートフォンを用いた簡易的な測定方法の開発に取り組んでいます。
具体的には、サイドブリッジやフロントブリッジといった一般的な体幹トレーニング種目を活用し、スマートフォンのセンサー機能を使って姿勢の安定性や持続時間を測定します。これにより、専門的な知識を持つトレーナーがいなくても、ご自身の体幹機能を正確に評価できるようになります。さらに、測定したデータに基づいて個々の状態に合わせた効果的なトレーニングを提案するアプリケーションの開発も進めています。このアプリが完成すれば、一般の方々も気軽に自身の体幹機能を把握し、効率的な体幹強化に取り組むことが可能になります。競技力向上や健康維持に役立つツールの提供を目指しています。

【冬季パラリンピック日本代表選手に対するパフォーマンスサポート活動】
私たちは、日本障害者スキー連盟に所属する冬季パラリンピック日本代表スノーボードクロス選手に対し、多角的なパフォーマンスサポート活動を行っています。
特に、選手が義足を用いてスノーボードを巧みにコントロールするためには、どのような筋活動が求められるのか、そしてそれを強化するためにどのようなトレーニングが最も効果的なのか、という点に焦点を当てています。この分野における先行研究はほとんどなく、まさに試行錯誤の連続です。選手個々の身体能力や義足の特性を詳細にフィジカルチェックし、得られたデータを基に、最適な筋力トレーニングや動きの習得に繋がるアプローチを模索しています。選手のパフォーマンス向上はもちろんのこと、将来的にはこの知見を他のパラアスリートへの応用も視野に入れ、義足スノーボードの可能性を広げるための貴重な挑戦を続けています。選手たちの限界を超える挑戦を科学的に支援し、メダル獲得に貢献できるよう尽力しています。



【スポーツ現場におけるメディカルサポート】
高校サッカー選手を対象に、スポーツ傷害予防とパフォーマンス向上を目的とした包括的なメディカルサポート活動を展開しています。具体的には、フィールドでの実践的な評価と、研究機関での詳細な測定を組み合わせたフィジカルチェックを実施。筋力、柔軟性、バランス能力など、様々なデータを多角的に測定しています。これらの詳細なデータは、選手一人ひとりの特性を把握し、潜在的な課題を発見するために不可欠です。さらに、私自身もスポーツ現場においてアスレティックトレーナーとして活動しており、選手の怪我の応急処置からリハビリテーション、そして復帰後のパフォーマンス管理まで、継続的なサポートを提供しています。選手が最高の状態でプレーできるよう、科学的根拠に基づいたサポートと実践的なケアを通じて、彼らの成長を力強く後押ししています

教員の研究テーマ
教授 市橋 則明(指導教員):「スポーツ動作のバイオメカ二クス的分析およびストレッチングの効果に関する研究」
講師 田頭 悟志:「スポーツパフォーマンス向上と障害予防に向けた多角的アプローチ:個別最適化支援システムの開発と実践的検証」
助教 山縣 桃子:「アスリートにおける動作特性の解析と再発予防戦略の構築」
助教 中條 雄太:「特定のスポーツにおける筋の協調構造とパフォーマンスの関連」
助教 梅原 潤:「骨格筋のスポーツ競技特異的適応とパフォーマンスへの影響」
主な業績抜粋
・Ueda Y, Taniguchi M, Noda T, Minaguchi A, Ichihashi N. Is decreased hip flexibility a risk factor for arm injuries in young baseball players? Systematic review and meta-analysis.(股関節の柔軟性の低下は少年野球選手の肩肘の障害の危険因子か?—系統的レビューとメタアナリシス-). Clin J Sport Med. 2025 Feb 11. doi: 10.1097/JSM.0000000000001285. PMID: 39932225
・Wang Z, Taniguchi M, Saeki J, Ichihashi N. Effects of High-Velocity Versus Low-Velocity Resistance Training on Muscle Echo Intensity in Healthy Young Women: A Randomized Controlled Trial. (高速度レジスタンストレーニングと低速度レジスタンストレーニングが健康な若年女性の筋エコー輝度に及ぼす影響:無作為化比較試験). Sports Health. 2025 May-Jun;17(3):637-645. doi: 10.1177/19417381241257181. Epub 2024 Jun 12. PMID: 38864295
・Komatsu T, Tateuchi H, Hirono T, Yamagata M, Ichihashi N. Influence of ankle invertor muscle fatigue on workload of the lower extremity joints during single-leg landing in the sagittal and frontal planes. (足内反筋の疲労が単脚着地時の下肢関節の負荷に及ぼす影響:矢状面および前額面における検討).Gait Posture. 2024May;110:29-34. doi: 10.1016/j.gaitpost.2024.02.021. Epub 2024 Mar 2. PMID:38471425.
・Itsuda H, Yagi M, Yanase K, Umehara J, Mukai H, Ichihashi N. Effective Stretching Positions of the Piriformis Muscle Evaluated Using Shear Wave Elastography.(シアウェーブエラストグラフィで調べた梨状筋の効果的なストレッチ肢位). J Sport Rehabil. 2024 Apr 9;33(4):282-288. doi:10.1123/jsr.2023-0240. PMID: 38593993.
・Iguchi J, Hojo T, Fujisawa Y, Kuzuhara K, Yanase K, Hirono T, Koyama Y, Tateuchi H, Ichihashi N. Synergistic Dominance Induced by Hip Extension Exercise Alters Biomechanics and Muscular Activity During Sprinting and Suggests a Potential Link to Hamstring Strain.(股関節伸展運動によって誘発される協働筋優位がスプリント中のバイオメカニクスと筋活動を変化させハムストリング肉離れとの関連を示唆する). J Strength Cond Res. 2023 Sep 1;37(9):1770-1776. doi: 10.1519/JSC.0000000000004484.PMID: 37616534.
・Umehara J, Taniguchi M, Yagi M, Li G, Soufi M, Otake Y, Sato Y, Fukumoto Y, Yamagata M, Nakai R, Ichihashi N. Skeletal muscle shape influences joint torque exertion through the mechanical advantages.(発揮筋力に対する骨格筋の形状の影響). J Appl Physiol (1985). 2025 May 1;138(5):1119-1132. doi: 10.1152/japplphysiol.00997.2024. Epub 2025 Apr 7. PMID: 40192188.
・Yamagata M, Tateuchi H, Asayama A, Ichihashi N. Relationship of the weaknesses of knee- and hip-spanning muscles with knee compression forces during stair ascent and descent.(階段昇降時の膝関節および股関節周囲筋の筋力低下と膝関節の圧縮力の関係) Gait Posture. 2024 Sep;113:1-5. doi: 10.1016/j.gaitpost.2024.05.023. Epub 2024 May 21. PMID: 38820763.
・Yamagata M, Tateuchi H, Asayama A, Ichihashi N. Influence of lower-limb muscle inactivation on medial and lateral knee contact forces during walking.(下肢筋の活動性低下が歩行中の膝の内側および外側接触力に与える影響). Med Eng Phys. 2022 Oct;108:103889. doi: 10.1016/j.medengphy.2022.103889. Epub 2022 Sep 5. PMID: 36195360.
・新谷健,大槻伸吾,橋本雅至,木下和昭,田頭悟志. 高校男子サッカー選手におけるBridge姿勢の保持時間と筋厚との関係. 日本整形外科スポーツ医学会雑誌. 2020 40(2):221-216.
・新谷健,橋本雅至,田頭悟志,福本貴典,高嶋厚史,木下和昭,大槻伸吾. 高校男子サッカー選手における体幹筋機能と競技パフォーマンスとの関係性. 日本臨床スポーツ医学会誌. 2019 27(1):20-26.
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