乳腺外科学
現在の研究テーマ
遺伝性乳癌卵巣癌における乳癌発症機構の解明を基軸とした予防的乳房切除の指標確立
乳癌は女性において最も罹患率の高い悪性腫瘍であり、その一部は遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)に関連して発症します。HBOC女性では乳癌発症リスクが高く、乳癌発症前にリスク低減乳房切除術(RRM)が選択肢となります。しかし、現時点では個々の乳癌発症リスクを客観的に評価する指標は十分に確立されていません。
本研究では、HBOC女性の乳腺組織および乳癌組織を対象に、網羅的遺伝子発現解析、組織マイクロアレイ、免疫組織化学染色などを用いて、HBOCにおける乳癌発症機構を解明します。これにより、RRMの適応判断に有用な客観的バイオマーカーの同定を目指します。
乳癌に対する近赤外光免疫療法の開発
近赤外光免疫療法(near-infrared photoimmunotherapy: NIR-PIT)は、光免疫療法薬(抗体と光活性化物質IR700の複合体)が癌細胞の細胞表面分子に結合し、近赤外光を照射することで癌細胞を選択的に傷害します。さらに、抗腫瘍免疫を活性化する特徴を有しており、免疫チェックポイント阻害薬との併用による再発抑制効果も期待されています。
HBOC乳癌では、早期乳癌と診断された場合でも一般的には乳房切除が選択されるため、患者負担の少ない新規局所治療法の開発が求められています。
また、乳癌のサブタイプの1つであるトリプルネガティブ乳癌(triple-negative breast cancer: TNBC)において術前化学療法後に病理学的完全奏効が得られなかったnon-pCR TNBCは極めて予後不良であることが知られています。しかし、non-pCR TNBCに対する術後治療の選択肢は限られており、新規治療法の開発が重要な課題となっています。
そのため、HBOC乳癌やnon-pCR TNBCに対する新たな治療戦略としてNIR-PITに着目し、開発を進めています。本研究は光免疫医学研究所と共同で実施しており、網羅的遺伝子発現解析により同定した標的分子に対する光免疫療法薬を開発し、乳癌細胞株、患者由来オルガノイド、in vivoモデルを用いて治療効果および安全性の検証を行っています。
カダバーサージカルトレーニングによる乳腺外科領域の解剖理解と手術手技訓練の取り組み
関西医科大学では、解剖学教室と連携し、献体されたご遺体を用いたカダバーサージカルトレーニング(cadaver surgical training; CST)を実施しています。乳腺外科学講座では、乳腺外科専門医取得前の専攻医や研修医を対象に、乳房全切除、乳房部分切除、腋窩郭清、乳頭乳輪温存乳房切除など、基本的手術から高度な術式までを学ぶ機会を提供しています。
CSTを通じて、乳腺外科手術に必要な解剖学的理解と安全な手術手技の習得を促進し、将来的に高度な技術を有する乳腺外科医の育成を目指します。
研究業績
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