内科学第一
内科学第一講座は、本学創立2年後に開講した最初の内科学教室です。現在当講座は、日常診療において血液・呼吸器・膠原病の患者を扱うことから、生体防御(免疫機構)の破綻から発生する疾患を診療のターゲットとしています。血液内科は、ほとんどすべての血液疾患を受け入れているとともに、輸血部との強力な連携体制のもとに造血幹細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植)にも力を入れています。また呼吸器内科は、良性呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患・気管支喘息など)と悪性呼吸器疾患の両方の診療を担当し、分子標的治療をはじめとする最新の治療を日常診療として行っています。さらに血液内科・呼吸器内科ともに、外来化学療法センターでの抗がん剤治療を行い、地域がん拠点病院にふさわしい体制を整えています。そして膠原病内科は、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど多くの難治性疾患を担当し、生物学的製剤などによる最新治療も提供しています。このように血液・呼吸器・膠原病の3診療部門に集約された現体制は、内科の中の柱のひとつとして重要な役割を果たしています。
生体防御・免疫を主要研究テーマに据えて、血液、呼吸器、膠原病、そして感染症の4つの診療をつなぐ研究を目指す
当講座は、血液、呼吸器、膠原病、そして感染症の4つの診療分野を担当しています。大学院での研究はこれらの分野をつなぐ、生体防御・免疫をキーワードに研究テーマとしているのです。この生体防御・免疫を学ぶことにより血液、呼吸器、膠原病、そして感染症それぞれの臨床へのより深い理解を促し、基礎的知識を持った臨床医としての熟成と、第一線で臨床と基礎をつなぐ研究を行う研究者となり、さらに生体防御・免疫の領域で、将来自立できるだけの幅広く深い専門的知識を持った研究者を目指していきたいと考えています。
現在の研究テーマ
血液・呼吸器・膠原病の各診療部門が治療の最終目標に掲げている生体防御機構の修復は、内科学第一講座における研究テーマに大いに反映されています。その中心となるのが樹状細胞(DC)に関する研究です。これまでは、幹細胞移植に伴う免疫系再構築のメカニズムや自己免疫疾患の病態解析および免疫抑制剤の作用機序におけるDCの役割などを中心に研究を展開。現在はさらに、アレルギー性疾患や悪性腫瘍などの難治性疾患に対する新しい治療法の開発へとその方向性は大きな広がりをみせています。
一方、平成22年4月から着任した野村教授は、長年マイクロパーティクル(MP)と呼ばれる血管内の恒常性を維持する物質の研究を続けてきましたが、今回、内皮細胞関連物質であるトロンボモジュリンおよびプロテインCとMPとの関係に着目し、血管病変の修復に関する新たな研究テーマをスタートさせています。今後は、従来のDC研究とMPに関する研究を融合させることにより、生体防御機構の修復に関する集大成をめざすあらたな研究体制へと発展させていく予定です。
1.ヒト樹状細胞を用いた臨床的及び基礎的研究
生体内で免疫監視機構の中枢に位置し抗原提示細胞として種々のエフェクター細胞を統御する樹状細胞(DC)は、現在までに様々な炎症性疾患の病態発症起点ならびにその進展に重要な役割を果たすことが判明してきていますが、1990年代当時、その詳細ならびにその重要性はある程度提唱されていたものの、ヒトにおけるDCの単離抽出の困難さからヒトにおける研究はほぼ皆無でした。私たちの研究室では、健常人の末梢血には、ミエロイド系DC2つの亜群とリンパ球系DCの計3つの亜群が存在することを明らかにし、これらを高純度に純化・単離する手法を確立(J. Immunol.1999)。それ以来、第一内科研究室でこのヒト樹状細胞を用いた研究を中心に据えて、現在まで研究体制を推し進めています。
樹状細胞は、エフェクター細胞を起動・教育する細胞であり、言うなれば免疫システムにおける司令官の役割を果たす細胞であるため、本来であれば免疫学の研究において、研究対象として外すことが出来ない細胞です。しかしながら、樹状細胞は生体に広く分布する一方、その細胞密度は低く、特にヒトにおいては単離抽出が極めて難しいものです。候補者は、独自にヒト末梢血中の2つの樹状細胞サブセットを高純度に単離する手法を確立し、それを用いてヒト樹状細胞の機能解析を専門として研究を行っています。このようなヒト樹状細胞を対象とした研究は日本国内でも限られたわずかの施設でしか行なわれていません。21世紀の難治性疾患の治療戦略は、生体防御の内なる免疫機構を解明し、その機構を活用する免疫療法に注目が集まっています。すなわち、生体防御の要に位置する樹状細胞を戦略のターゲットに位置づけることです。
ヒト樹状細胞の生物学的特性の解明と薬剤ターゲットとしての重要性:当教室では、健常人の末梢血には、ミエロイド系樹状細胞(myeloid DC; mDC)と形質細胞様樹状細胞(plasmacytoid DC; pDC)の2つの亜群が存在することを明らかにし、mDCはTh1誘導とTh2誘導の可塑性を有し、このTh2誘導能は、液性免疫としてグロブリン産生に寄与するのみならず、OX40Lの発現によりアトピーなどのアレルギー性炎症の病態に寄与することを解明しました。もう一方のpDCは血中のI型IFN産生量のほとんどを占め、細胞のシグナルシステムの殆どをそのI型IFN産生に費やす特徴を有しており、抗ウィルス免疫に無くてはならない細胞であることも報告しています。さらに候補者はこれらの研究実績を発展させ、臨床応用へと発展させています。すなわち樹状細胞を対象に、様々な薬剤(多発性骨髄腫治療薬IMiDs、免疫抑制剤ミコフェノール酸モフェチル、HMG-CoA還元酵素阻害剤スタチンなど)に対する反応性を解析し、薬剤の作用機序解明と、疾患における樹状細胞が治療ターゲットしての重要性であることも明らかにしました。一例として、臨床的血中濃度のIMiDsはpDCの持つIFN-a産生能を維持し、mDCの有するTh2関連液性免疫/アレルギー応答も増強することで皮疹が増える反面、骨髄腫に対する治療効果に寄与することを解明しています。
2.GVHDと制御性T細胞
移植後GVHDとその病態に関わる制御性T細胞をヒト、ならびにマウスを用いて研究しています。
現在の研究テーマ
研究業績