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学部・大学院

微生物学

 近年、様々な新たな感染症(新興感染症)や、これまで抑えられていた感染症(再興感染症)が世界中で流行し、社会的に大きな問題となっています。したがって、医学部の学生は長い歴史の中で蓄積されてきた微生物学の体系に加え、急速な勢いで出現する新しい感染症に関する知識を更新していかなければなりません。さらに、細菌学やウイルス学の延長線上で発展してきた分子生物学や免疫学の最新の知識は、現代の感染症の理解において必須のものとなっています。
 微生物学講座は医学部第2学年後半から始まる、「感染と生体防御」ユニットにおける「細菌学」と「ウイルス学」のサブユニット、および「微生物学実習(P2)」を担当しています。そのなかで、常に社会的な視点と、分子レベルでの理解を念頭におくことで、微生物学・感染症学を学ぶ学生が、膨大な知識の海の中に窒息することなく、臨床での研修の基盤となる学力を養えるよう心がけています。
研究面では、1980年代にヒトの白血病の原因ウイルスとして初めて見つかったHTLV-1の感染で発症する成人T細胞白血病(ATL)や神経疾患(HAM)の治療と発症予防に向けた研究を進めています。

現在の研究テーマ

現在の研究テーマ

HTLV-1感染ヒト化マウスを用いたATL発症機構解明

HTLV-1は母乳を介して母から子に感染しますが、その中の約5%の人が中高年期になってATLを発症します。この数十年に及ぶ長い潜伏期の間に何が起こっているのか明らかにするためには動物モデルでの解析が重要ですが、HTLV-1はマウスなどの実験動物には感染しないため、その開発が遅れていました。そこで、我々はヒト臍帯血由来造血幹細胞を重症免疫不全マウスに移植することで、血球系をヒト由来のものに置き換えたマウス(ヒト化マウス)を作成し、これにHTLV-1を感染させたところ、感染数ヶ月で感染Tリンパ球の腫瘍性増殖と、ATLに特徴的な花弁様分葉核を持ったリンパ球の出現を再現することに成功しました。現在、ATL様病態発症過程において、感染細胞におけるウイルスおよび宿主遺伝子の発現の変化と、宿主ゲノムの遺伝子変異を経時的に解析することで、ATL発症機序の解明とそれに基づく発症予防法の開発に繋げたいと考えています。

ATL発症予防ワクチンの開発

HTLV-1感染者は日本国内に約100万人いますが、ATLやHAMを発症するのはその中の一部の人です。このことは感染者の宿主免疫とウイルス感染細胞のバランスが重要な役割を果たしていることを示しています。従って、宿主体内の抗HTLV-1免疫を活性化することで、感染予防とATL発症予防が期待されます。そこで、HTLV-1の発癌蛋白Taxの合成ペプチドをヒト化マウスにワクチン投与すると、HTLV-1感染細胞の増殖を抑制することが出来ました。その際、ワクチン接種時に同時投与するアジュバントの種類により、HTLV-1感染細胞の増殖抑制効果が異なることから、現在、種々のアジュバントを用い、ヒト化マウスにおける宿主免疫活性化の差異を検討することで、抗HTLV-1宿主免疫の最適化とATL発症予防への応用を目指しています。

がん微小環境を標的とした新規ATL治療法の開発

ATL細胞のゲノム解析において免疫チェックポイント分子PD-L1の発現異常が観察されるなど、ATL発症過程における様々なかたちの免疫抑制機構の関与が強く示唆されていますが、実際、HTLV-1感染ヒト化マウスに抗PD-1抗体を投与することで、感染細胞の腫瘍性増殖が抑制される結果が得られています。また、ヒト化マウスでのHTLV-1感染T細胞の遺伝子発現解析からは、感染細胞が抑制性T細胞(Treg)の性質を持つことが示されていることから、近年数多く報告されている「がん微小環境」におけるTregや免疫チェックポイント分子を標的とした種々の試薬が、HTLV-1感染ヒト化マウスにおける感染細胞の腫瘍増殖を抑制し得るかどうかを個体レベルで検証し、さらにその機構を感染組織レベルで解析することで新規ATL治療法の開発に繋げていく計画です。

連絡先

〒573-1010 枚方市新町二丁目5番1号
関西医科大学 微生物学講座
電話 教授室 072-804-2380
研究室 072-804-2382
FAX 072-804-2389

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