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学部・大学院

神経内科学

神経科学 Neuroscienceに関連した臨床領域は3つに大別される。すなわちNeurology神経学、Neurosurgery脳神経外科学、 Psychiatry精神医学である。そのなかで神経学を専門とする臨床分野を日本では神経内科と呼ぶことが多い。その背景には、1975年から神経学を専門とする診療科を「神経内科」と標榜することが定められたことがある。心psycheの問題を対象とする精神科、心の問題に基づく体の障害を対象とする心療内科とは異なり、神経系の機能・構造の器質的障害に基づく疾患を対象とする。寝たきりの原因の第一位である脳血管障害、65歳以上では100人に一人以上の頻度でみられるパーキンソン病、さらに、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症などの神経難病、神経免疫性疾患(多発性硬化症、重症筋無力症、多発性神経炎など)、てんかん、片頭痛などの機能性疾患を対象とする。いずれもその診断、治療に高度の専門性を要求される疾患であり、現在日本神経学会は約5000人の専門医を擁しているが、地域医療における神経内科専門医はまだまだ不足している。関西における臨床神経学の拠点として、一人でも多くの優れた専門医を輩出することを教室の使命と考えている。

脳を知り、脳を守る:Neuroscienceに基づいた病態解明と、より良い治療を

神経内科学講座は平成9年に創設され、臨床講座としての体制作りに尽力する中で、研究面においてはこれまで、主に神経病理学的研究を展開してきました。運動ニューロン病動物モデルの研究はedaravoneの臨床治験につながり、筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬として承認されました。さらにALSにおける核細胞質間輸送の障害、ストレス顆粒の関与、ERストレスの関与、TDP-43陽性封入体形成機序などについての病理学的所見をいち早く報告し、その後の病態解明に貢献してきました。広島大学との共同研究では、ALSの原因遺伝子optineurinの同定およびその神経病理所見を発表しています。創立から20年を迎えますが、臨床講座としての体制および研究スタッフが充実するとともに、現在では大きく4つの研究活動を展開。パーキンソン病およびALSにおける神経細胞変性の機序、大脳基底核可塑性、多発性硬化症など神経免疫疾患における病態解明および治療法、さらに脳血管内治療の臨床研究です。臨床とニューロサイエンスに根ざした研究を展開し、少しでもより良い臨床に繋がることを目指しています。

現在の研究テーマ

現在の研究テーマ

Ⅰ.大脳基底核神経回路の可塑性の研究

 パーキンソン病の治療において、レボドパ誘発性ジスキネジア(LID)等の運動合併症を回避するためには間欠的ではなく持続的なドパミン刺激が望ましいことが臨床的に知られているが、LID発症の分子メカニズムの詳細は未だ不明である。大脳基底核神経回路の制御にはドパミンだけではなく、アセチルコリンやアデノシン、セロトニンなど非ドパミン系神経伝達物質が深く関与していることが知られている。我々は片側パーキンソン病モデルラットに対してレボドパを間欠投与してLIDの動物モデルを作製した。この線条体での非ドパミン系神経伝達物質の受容体mRNAを定量し左右を比較することによりLID発現における各種神経伝達物質の役割を明らかにする。そして基底核神経回路の代償機構の理解を深めることによって進行期パーキンソン病の運動合併症に対する新たな治療戦略の標的を見出すことを目指している。

II. 頸動脈ステント留置術後の過灌流予防に関する検討

 頸動脈ステント留置術(CAS)後の過灌流(CHP)は重篤な周術期合併症を引き起こし得るため、その発生の予測と予防治療の確立が期待されている.CHPの予測に関しては,近年SPECTで算出された脳循環予備能(CVR)低下がCHPと関連しているとの報告が散見されている.そこで,われわれはSPECTで算出されたCVRと脳血管造影検査の所見を比較し,leptomeningeal collaterals(LM)の存在がCVR 低下と強く関連していることを報告した.この結果は,LMの存在がCHPと関連している可能性を示唆しており,CASの周術期管理に有用と考えられた.また,CHPの発生予防に関しては,現在まで降圧治療に加える確立した治療は存在しない.そこでわれわれは,フリーラジカルスカベンジャーであるedaravoneをCAS術前に投与し,CAS後のCHP発生予防に効果があるか否かのランダム化比較試験を行った.結果は,全体では有意差はなかったが,CVR低下例に限定するとedaravone群でCHPが有意に減少していた.この結果を受けて,CVR低下例に対するedaravoneのCAS術前投与の有用性について検討を進めていく方針である. 

Ⅲ. 神経変性疾患におけるNRG-1/ErbBシグナルに関する研究

 NRG-1/ErbB4シグナルは細胞の分化・増殖・転写等、多機能のシグナルに関与することが知られており、中枢神経においては、神経細胞の発達・可塑性・生存等に関わる。近年、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、進行性核上性麻痺(PSP: Murakami et al, 2018)でNRG-1/ErbB4シグナル異常が報告され、神経変性疾患に共通してNRG-1/ErbB4シグナル異常が存在する可能性が示唆されている。ErbB4受容体は選択的スプライシングにより膜近傍領域(JM-a, JM-b)と細胞質領域(CYT-1, CYT-2)にそれぞれ2つのアイソフォームが存在し、アイソフォームの違いにより細胞内でのシグナル伝達に違いがある。ERRB4がリスク遺伝子である統合失調症では、ErbB4のスプライシングバリアントの発現の変化が病態に関与している事が報告されている。当院に保存されているControl及びALSの凍結切片を用いてErbB4 アイソフォーム(JMa,JMb,CYT-1,CYT-2)のmRNAの発現を検討したところ、Controlでは、JMaの発現がJMbの発現と比較し優位であったが、ALSではこの優位性が消失していた。また、Controlと比較してCYT-2/CYT-1の比率がALSでは優位に増加していた。このことから、ALSの病態にErbB4の選択的スプラインシング異常が関与している可能性が示唆された。今後ブレインバンクとの共同研究で、各神経変性疾患の凍結切片の供与をいただくことでAD、PD、PSPといった神経変性疾患でErbB4スプライシングバリアントの発現を検討することにより、神経変性疾患の病態を解明することを目指している。

Ⅳ. 免疫性神経疾患に対する臨床および基礎研究

1.多発性硬化症(MS)疾患修飾薬への治療不応性を予見する臨床所見、神経画像所見を明らかにした。今後はMRIの中心静脈サインを持つ病巣頻度と治療反応性の解析をする予定である。
2.MSの再発期にB細胞がTLR4刺激やCD40刺激によって抗炎症性サイトカインを産生することが再発を寛解に誘導する一機序であることを示した(J Autoimmun 2018)。
3.ミエリン糖脂質スルファチドはT細胞の増殖抑制をさまざまな機序で抑制するが、進行期のMSではスルファチドのT細胞増殖抑制効果が減弱していることを認めている。スルファチドの免疫系関与とその機序を解析中である。
4.抗神経抗体に頼らない自己免疫性てんかんに対する診断アルゴリズムを京都大学との共同研究で作成したが、T細胞フェノタイプを解析によってアルゴリズムを検証する。
5.重症筋無力症(MG)末梢血において、ICOSを強発現する濾胞性T細胞(CXCR5陽性)増加しており、その頻度は重症度は相関していた。MGにおける濾胞性T細胞の機能的偏倚と病態への関与を研究中である。
6.Hereditary diffuse leukoencephalopathy with spheroids(HDLS)は、Colony stimulating factor 1 receptor(CSF1-R)を原因遺伝子とする白質脳症である。CSR1-Rは単球系細胞に発現している。末梢血単球の機能的解析を行い、炎症性サイトカイン分泌能の亢進や貪食能の低下していることを明らかにした。

連絡先

〒573-1010 枚方市新町二丁目5番1号
関西医科大学 神経内科学講座
電話 072-804-2540,072-804-2545(ダイヤルイン)
FAX 072-804-2549

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医学部 神経内科学講座
大学院医学研究科 医科学専攻 臨床神経学

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