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学部・大学院

形成外科学

形成外科は、体表や顔面の先天異常や外傷、変形、腫瘍、母斑、潰瘍、瘢痕・ケロイド、色調変化を手術やレーザーで修復再建する臨床治療を進める診療と治療を行う分野です。形成外科学講座では、以下の治療と基礎的研究を進めています。
1.皮膚形成部門:皮膚腫瘍、母班・血管腫、熱傷、皮膚慢性潰瘍(難治性潰瘍、褥瘡)、瘢痕拘縮、瘢痕・ケロイドなど。
2.頭蓋顎顔面形成部門:唇裂口蓋裂、小耳症、頭蓋先天異常、顔面外傷(骨折含む)、顎変形症、顔面輪郭形成、顎関節脱臼など。
3.その他の表在骨格形成部門:漏斗胸、鳩胸などの胸郭変形の形成や膿胸、胸壁欠損の再建。
4.眼瞼・眼窩形成部門:眼瞼下垂、内反症、外反症、眼瞼・眼窩腫瘍、眼瞼・涙道・眼窩再建、義眼床再建など。
5.乳房再建部門:乳癌切除後の再建や発育不全乳房、過大乳房の形成。
6.頭頸部再建部門:頭頸部の外傷・腫瘍における種々の再建。
7.四肢再建部門:多合指(趾)症、裂手、絞扼輪症候群、血管奇形、リンパ浮腫、切断指肢再接着。
8.外陰部再建部門:腫瘍切除再建、矮小・埋没陰茎、包茎などの外陰部再建。
9.皮膚レーザー部門:Qスイッチルビーレーザー、色素レーザー、炭酸ガスレーザー、脱毛レーザーによる治療。
10.抗加齢医療部門:シワ、シミ、眼瞼下垂を柱に健康科学科と連携。
11.言語治療部門:口蓋裂言語、小児言語発達遅滞などの言語治療や構音改善手術。

再生医療と創傷治癒の基礎研究から形成外科での臨床応用を目指して

 形成外科学講座では、再生医療と創傷治癒を研究テーマとし、基礎研究から臨床に繋がる展開ができる研究を鋭意進めています。中でも主要な研究テーマは、次の5つです。1)巨大色素性母斑の高圧処理では再生医療等安全性確保法の第2種、2)の脂肪幹細胞(ADSCs)や、3)の自己多血小板血漿(PRP)では第3種での許可を得て、それぞれ倫理審査を受けて臨床実施を進めており、基礎研究かつ臨床応用に優れた先進的成果を挙げています。他に4)骨形成タンパク(BMP)による骨誘導、5)電場環境における血管その他の組織の温存の検討を行っています。いずれも臨床応用の展開に向かう基礎的臨床的研究です。

現在の研究テーマ

巨大色素性母斑の高圧処理を応用した皮膚再生

 
 

 自家培養表皮が平成28年に巨大色素性母斑にも保険適用となり、母斑治療にも使えるようになりました。この治療を更に有効なものにするため、母斑組織を高圧処理によって不活化処理(細胞をすべて死滅処理)し、真皮再生に再利用する新しい治療法の研究を行っています。ヒト母斑組織を高圧処理して死滅させたものとそうでないものを、それぞれ免疫不全マウスに移植した結果、未処理群は1年後も色素が残っていたのに対し、死滅処理群の色素は吸収され、消滅したことを確認しています。つまり、母斑細胞さえ死滅させればほくろが自然に消滅することになります。この研究は、国からの研究費助成(日本医療開発機構:革新的がん医療実用化事業)をうけて実施しています。現在10例の臨床研究が終了しており、今後、先進医療申請に向けた準備を行う予定です。

脂肪幹細胞を応用した乳房再建

 近年、脂肪幹細胞を用いた再生医療が注目され、さまざまな領域で臨床応用に向けての研究が進んでいます。脂肪組織は形成外科領域で扱う頻度の高い組織であり、幹細胞の分離・移植が、安全でかつ簡便にでき、普遍的な骨髄に代替する幹細胞の供給源となれば極めて理想的です。当講座では、臨床応用を目指して、ヒト脂肪幹細胞の特性解析を行うとともに、動物実験では脂肪再生を目的として白色家兎同種脂肪幹細胞移植モデルや免疫不全マウス移植モデルを作成し、データの蓄積を行ってきました。さらに臨床試験に向けて、学内での再生医療等安全性確保法に基づいた認定再生医療等委員会の認可、ならびに近畿厚生局の認定を受けた後、脂肪幹細胞を混合した遊離脂肪自家移植の第3種再生医療等提供計画を作成して申請。医学倫理委員会と前記の認定再生医療委員会の審査を経て、自動脂肪幹細胞抽出機器を用いた先進の乳房再建の臨床研究を開始しています。

自己多血小板血漿を用いた皮膚再生

 多血小板血漿(PRP ; Platelet-rich Plasma)とは、全血を遠心分離で濃縮した血小板を含む、血漿液の呼称です。この自己のPRPを人為的、強制的に活性化させると血小板が内包する細胞増殖因子(サイトカイン)を多種、多量に放出することを応用し、これを調整して加療目的の組織、細胞領域にもたらすことで、その組織、細胞の活性化、増殖に導く治療がPRP療法です。活性化したPRPは、血中のおおよそ100倍のPDGF、VEGF、TGF-β、bFGFなどを含み、局所に投与できます。自己由来のサイトカインであることから、安全、安心です。私たちは、PRP療法を特に慢性潰瘍(褥瘡・下腿潰瘍)、シワ治療、美肌、育毛や骨接合、骨再生の再生医療での応用を想定し、基礎研究で機序や有効性を確認しながら臨床応用を進めています。

骨形成タンパクを用いた骨再生

骨形成タンパク(BMP; bone morphogenetic protein)は、胚の背腹軸の決定や骨・軟骨の分化を促進する細胞成長因子の一つで、TGF-βスーパーファミリーに属します。現在、遺伝子組み換えで得られます。BMPは、間葉系幹細胞や骨芽細胞前駆細胞に作用し、骨芽細胞を誘導し、異所性に骨を誘導する骨誘導能を有しています。これまで私たちは、各種薬剤や環境負荷による骨誘導や皮弁内骨誘導、血管柄付き骨移植や骨欠損を想定した骨形成、サルでの骨誘導実験など臨床応用に繋がる多様な研究成果を挙げて、臨床的有用性を検証。さらに臨床的応用を想定した実験研究を進めています。

電場環境における血管保存

 電圧負荷式冷蔵庫は、庫内で電場を発生することで分子を振動させ、細胞内の水分を凝結させないまま過冷却することにより、マイナス温度で凍結しない保存庫として開発された機器です。庫内に入れるだけで特別なプログラムや不凍液などを使用せず簡便にマイナス温度での保存が可能なため、この機器を用いた組織保存の期間延長を試みています。ラットの大腿動脈を4℃0Vと‐2℃1000Vの条件下で保存後に同種のラットにバイパス移植をおこなったところ4℃0V条件下での保存では血栓形成を認め、組織学的にも血管内膜の剥離が認められました。一方、-2℃1000V条件下での保存で移植後は血管の開存を認めており、電場環境における保存延長効果が大いに期待できると考えられます。今後組織などの保存に応用していく予定です。

連絡先

〒573-1010 枚方市新町二丁目5番1号
関西医科大学 形成外科学講座
電話 072-804-0101(代表)
内線 (80)2613(医局)
FAX 072-804-2031
e-mail prs@hirakata.kmu.ac.jp

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