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学部・大学院

皮膚科学

皮膚科は疾患の種類が極めて多く、診断・治療の面で、内科学、外科学、病理学的な要素を持つ科と言えます。当科では、診断に際し、すべての生検・手術標本の病理診断と蛍光抗体の標本作製・診断を実施しています。臨床的には、皮膚症状から内臓悪性腫瘍や代謝性疾患、免疫アレルギー疾患、血液疾患などを発見することも珍しくありませんし、膠原病の早期診断や治療も皮膚科で行っています。すべての皮膚疾患に最新の診断法と治療で対応できるように努力しており、とくに、アトピー性皮膚炎や蕁麻疹、接触皮膚炎、乾癬、白斑、円形脱毛症などのアレルギー・炎症性皮膚疾患、光線過敏症、サルコイドーシスなどの肉芽腫性疾患、膠原病、などの診療に力を入れています。種々の難治性疾患に対するnarrow-band UVB療法やPUVA療法などの光線療法と、全身性肉芽腫性疾患であるサルコイドーシスの診断・治療、乾癬に対する生物学的製剤治療に関しては日本で屈指の施設です。また、薬疹や接触皮膚炎、蕁麻疹などのアレルギー性疾患の原因検索も積極的に行っています。

皮膚病変を伴う炎症性疾患の病態解明

当講座の臨床的特徴として、光線過敏症や接触皮膚炎、食物アレルギーなどのアレルギー性皮膚疾患の症例が多く、アレルギー生体検査や光線テストの実績が豊富であること。難治性疾患に対する光線療法を積極的に行っていること。サルコイドーシスの診断・皮膚病変の治療に関しては日本で屈指の施設であること。乾癬に対する生物学的治療は日本でも有数の治療経験があること。膠原病の中で強皮症と皮膚筋炎の症例を豊富に経験していることなどが挙げられます。そのため、これら肉芽腫性疾患、光線誘発性疾患、アレルギー性疾患、乾癬、膠原病の病態の解明をテーマに研究を行っています。単球系細胞はCD14とCD16の発現により分類され、それぞれ異なる炎症反応に関わり、さらに樹状細胞や類上皮細胞に分化します。当講座では上記疾患に関与する免疫担当細胞として、とくに単球系細胞に焦点を当てて研究を行っており、リンパ球の分化や多面な機能が解明されるとともに、リンパ球の関わりについても検討しています。今後、肉芽腫構成細胞の類上皮細胞の誘導機構と同定法の確立、解明されていない光線過敏症・アレルギー性疾患の抗原検索を目指しています。

現在の研究テーマ

現在の研究テーマ

In vitroでの肉芽腫形成:病態と治療薬の奏効機序の解明

  肉芽腫は単球系細胞である類上皮細胞、多核巨細胞で構成されています。In vitroでこれらの細胞を誘導するために、末梢血単球に種々の刺激を加えてLanghans型・異物型巨細胞が形成される系を確立し、その形成にはIFN-γの存在が必須であり、細菌の細胞膜の構成成分であるMuramyl dipeptideがLanghans型巨細胞の誘導を優位にすることを示しました(Mizuno K, J Leukoc Biol. 2001)。また、その形成にはICAM-1などの接着分子やP2x7受容体が重要であり、巨細胞の前駆細胞はCD14++CD16-単球でCD14+CD16+単球やマクロファージ、樹状細胞からは形成されないことを報告しました。このことから、肉芽腫性疾患においては組織マクロファージからではなく末梢血中のCD14++CD16-細胞が組織中に浸潤した後に、種々のサイトカインの働きにより多核巨細胞が形成されるものと思われますOkamoto H, J DermatolSci. 2003)。肉芽腫患者さんの巨細胞形成能は正常人に比較して有意に上昇しMizuno K, Clin Exp Immunol. 2001)、肉芽腫に奏効する既知薬剤や光線治療は単球の接着分子の発現を低下させ、巨細胞形成を抑制するため、直接単球に作用しその奏効性を発揮するものと考えられます(Mizuno K, Br JDermatol. 2004, J Dermatol Sci 2004)。本in vitroの系は肉芽腫疾患における患者単球の肉芽腫形成能や薬剤の奏効性、肉芽腫における単球の役割を解明するのに有用な実験系で、今後臨床応用に用い、さらに肉芽腫の病態解明、類上皮細胞の誘導と同定法の確立を目指します。

サルコイドーシスの病勢マーカー

  サルコイドーシスは全身性の類上皮細胞肉芽腫性疾患であり、遺伝的素因を背景にTh1優位のTリンパ球が免疫応答し、単球系細胞の類上皮細胞が主要構成細胞である肉芽腫を形成します。そのためTリンパ球、単球系細胞、病変部に存在する他の炎症細胞からの可溶性因子がサルコイドーシスの診断や病勢の把握に重要な指標となる可能性が考えられます。単球由来因子としてCD163(Tanimura H, Sarcoidosis Vasc Diffuse LungDis. 2015)、リンパ球関連因子としてBAFF(Ueda-Hayakawa I,Rheumatology(Oxford). 2013)、sIL-2レセプター(TH NguyenC, J Dermatol. 2017)、TARC(TH Nguyen C, submitted)を検討すると、それぞれの可溶性因子と疾患病勢との関連性があることが判明し、サルコイドーシスの病態にTh1リンパ球、単球系細胞だけでなくBリンパ球やTh2リンパ球も関わることが示唆されました。サルコイドーシスは各臓器病変の症状や臨床経過が多様であり、自然寛解する一方、重篤な心病変や線維化が進行する肺病変、重症の視力障害、神経症状、慢性の皮膚病変に至ることがあります。各臓器病変の予後の予測因子にこれらのマーカーが有用であるかについてさらに検討中です。

炎症性皮膚疾患における単球亜群の関わり

 末梢血中の単球はCD14抗原とCD16抗原により3種類のサブセット、classica(l CD14++CD16‒)、non-classical( CD14+CD16++)、intermediate(CD14++CD16+) 単球に分類され、それぞれ多様な機能によって様々な疾患に関わっています。乾癬ではCD14+CD16+細胞上のCD86発現が亢進し、臨床的病勢PASIscoreや病勢マーカーbeta defensing-2と相関することを認めました。さらに、同細胞が乾癬病変部の表皮および真皮内に浸潤していることから、乾癬の病態に関わることを報告しています(TH Nguyen C, J Dermatol Sci inpress)。これまで、炎症性皮膚疾患の病態にリンパ球の役割が着目されてきましたが、単球亜群の解析により、炎症性皮膚疾患の病態が一層解明されることが期待されます。

全身性強皮症・皮膚筋炎の病態の解明

様々な膠原病の中で、全身性強皮症と皮膚筋炎は皮膚症状が顕著であり、QOLの低下に直接結びつく疾患です。それぞれ特異的自己抗体があり、各抗体により特徴的な病状が異なることが知られています。これまで、PL-7抗体(Ueda-Hayakawa I, Eur JDermatol. 2013)、Mi-2抗体(Matsuda T, J Eur AcadDermatolVenereol. 2017)、Ku抗体(Ohashi S, J Dermatol. 2013)、RubBL1/2(Nomura Y, in preparation)の特徴的所見を報告し、膠原病に対する新規薬剤による皮膚障害への対応法についても報告しました(Ueda-Hayakawa I, J Dermatol. 2017, Matsuda T, J Dermatol.2017)。膠原病においてそのような自己抗体がその病態に密接に関与していることから、異常な抗体産生が過剰になる原因およびそのメカニズムの解明のため、B細胞異常および抗体産生を促進するT細胞サブセット異常などの解析を行っています。活性化したある特定のT細胞はB細胞の成熟と活性化を誘導し、抗体産生を促進する可能性があるため、これらの細胞における機能異常についても検討しています。膠原病でみられる細胞性免疫と液性免疫との関連の解明を目指し、さらには、これらの細胞が病態に重要である可能性を検討することにより、これまでの治療とは異なる、T細胞もしくはB細胞の活性化の制御を標的とした新たな治療法の開拓に貢献できることを目指しています。 
連絡先

〒573-1010 枚方市新町二丁目5番1号
関西医科大学 皮膚科学講座
電話 072-804-0101(代表)

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医学部 皮膚科学講座
大学院医学研究科 医科学専攻 皮膚科学

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