MENU

学部・大学院

細胞情報学

細胞外の情報は、様々な分子のネットワークにより細胞の中へと伝えられ、細胞の増殖や分化・細胞死といった現象を引き起こします。私たちの研究室では、現在、MAPK経路とmTORC1経路という2つのシグナル伝達ネットワークに注目して、免疫系が正常に働く仕組みについての理解を深めるとともに、その仕組みを利用した人為的な免疫制御法の開発を目指しています。

現在の研究テーマ

mTORC1経路を介した免疫制御機構の解明

 mTORC1経路は細胞内の栄養環境を感知して細胞機能を調節しており、免疫系では特にT細胞の増殖・分化と密接に関わることが知られています。私たちは、mTORC1シグナルに必須のコンポーネントであるRaptorやmTORC1シグナルの負の調節因子であるTsc1を免疫細胞特異的に欠失させる手法を用いて、 mTORC1シグナルがそれぞれの免疫細胞でどのような役割を担っているかを追求しています。
 現在までに、自己免疫病態と密接に関わるTh17と呼ばれる細胞集団の分化にmTORC1シグナルが重要な役割を担っていることや、B細胞が抗体産生細胞へと分化する過程でmTORC1シグナルが必須の働きをしていることなどを見出しています。

MAPK経路を介した免疫制御機構の解明

 MAPK経路は細胞外からのシグナルを核へと伝える最も主要な経路の一つであり、すべての真核生物において機能的に高度に保存されています。哺乳類ではERK1/2経路・JNK経路・p38経路・ERK5経路の4つの独立した経路が機能しており、中でもJNK経路はストレスに応答して細胞にアポトーシスをもたらすと考えられてきました。しかし、私たちは活性化したT細胞の解析過程で、TAK1/MKK7/JNKからなるシグナル伝達経路がむしろ活性化T細胞の生存維持に寄与していることを見出しました。実際、TAK1の特異的阻害剤であるLL-Z1640-2で活性化T細胞を処理することで、活性化したT細胞のみに特異的にアポトーシスを誘導することが可能です。一方、LL-Z1640-2は活性化していないT細胞の生存や他の活性化した免疫細胞の生存には影響を与えず、TAK1を標的とすることで活性化状態にあるT細胞のみを選択的に除去可能であることが分かりました。以上の事実は、TAK1/MKK7/JNK経路を標的にすることで、免疫病態を引き起こす病的な活性化T細胞や、臓器移植の際に拒絶反応を引き起こすT細胞のみを排除可能であることを強く示唆しています。現在、各種の病態モデルを用いて、この可能性を検証中です。

Arf経路を介した免疫制御機構の解明

 Arfは細胞内の小胞輸送を制御する低分子量Gタンパク質であり、マウスにはArf1-Arf6の6つのアイソフォームが存在しています。これまで培養細胞を研究対象にArfの機能解析が進められてきましたが、神経系や免疫系に代表される高次生命現象との関連はほとんど分かっていませんでした。私たちは奈良女子大学や筑波大学と共同で免疫担当細胞特異的なArf欠損マウスの樹立に取り組み、各種の解析を行っています。先行しているT細胞特異的なArf欠損マウスにおいては、多発性硬化症のモデルであるEAEやクローン病のモデルであるナイーブCD4+ T細胞移入大腸炎の発症がほぼ完全に抑制されており、Arf経路を標的とすることで各種の炎症性疾患を制御可能であることが分かってきました。現在、Arf経路を標的とした免疫制御の可能性をさらに検証中です。

連絡先

〒573-1010 大阪府枚方市新町2-5-1
関西医科大学 附属生命医学研究所 生体情報部門
電話 072-804-2431 (ダイヤルイン)
FAX 072-804-2432

関連

大学院 医学専攻 細胞情報学

ページの先頭へ